出版エコシステムの近未来:(1)アマゾンの戦略

reengineering先週の記事で紹介したアマゾン KDP Printは、キンドル出版者のためのオプションとして「簡易印刷本」を加えたものだが、紙とデジタルの両方を同時に選択肢とする、統合された出版プロセスという方向性を示した。そこでその関係がKindle/Amazonにおいてどう扱われるのかに関心が集まっている。

エコシステム:市場と仕様をめぐる経済性の最適解

business_model3著者/発行者から読者までのサプライチェーンを構成する経済活動を、本誌では出版エコシステムと呼んでいる。これは出版とともにあるが、近代以降に形成された商業出版は、デジタル技術の普及とともに大きく変貌を始め、まだその渦中にある。変化を特徴づけるのは、流通や制作などの主要分野でWeb上のプラットフォーム・サービスが支配的になっていること、そしてアマゾンという一企業がグローバルなシステムのグランド・デザインを持って着々と再構築を進めていることだ。いまや紙を含めた米国の全出版物流通の過半を占めるこの会社が行うことは、エコシステムに影響を与えずにはおかない。

在来出版でも、自主出版でも、制作プロセスの市場に対する最適化は最大の課題であり、KDPというE-Book出版プラットフォームを成功させたアマゾンの次のステップは<紙とデジタル>の制作・流通プロセスを統合することと考えられている。KDP Printがそれではないかと考える人も多いわけだ。たしかにボタンをつけるのは簡単だが、それでは済まない。印刷本にはE-Bookと比べて無限に近い選択肢がある。その中で仕様(品質/コスト)と市場(価格×販売数)をめぐる経済性の最適解を出すのが難しいから多くの出版が採算を割っているのだ。印刷本のエコシステムは衰退しているが、その影響は中小規模の出版ほど大きい。アマゾンのビジネスモデルは、それをカバーすることを考えていると思われる。

Createspaceはなくなる?

CreateSpceGoodEReader (02/19)のマーシー・ピルキントン氏は、KDP Printが印刷本の受託(In Demand)制作サービスであるCreatespace (CS)のKDPへの統合の方向に向かうかどうかに注目している。CSは以前からオンデマンドでのKindle出版をサポートしており、KDPがオンデマンドのペーパーバック出版を始めること、ちょうどクロスオーヴァーする形となる。CSはKindleを兼ねるが、KDPは独自のPoDサービスを持っていなかった。

入口が違うだけで、やることはほぼ同じなので、同氏はCSがKDPのメニュー・バーにあるサービスだけになる可能性があると考えるのは自然だろう。しかし、筆者にはその可能性は高くないと思われる。印刷本のニーズは多種多様で、PoDの進化の余地は大きい。PoDは、技術革新によって商業出版のほうで成長を見込めるし、それがローエンドのPoDを進化させる。印刷本のニーズは、簡易PoDのKDP Printでカバーできるようなものではなく、高付加価値本にシフトしていくと筆者は考えている。

印刷本は森林を伐って生まれるが、それは読者を含めた出版エコシステムという森林を形成してきた。デジタルはシステムを単純化するがそれによって生物相を貧しくする懸念もある。アマゾンがCSで狙っているのは、経済性と品質を高いレベルでバランスさせるプロフェッショナルな制作・印刷(クイック印刷)サービスで、フルフィルメント(FBA)を含めた出版社向けソリューション(商業印刷、企業出版を含む)であろう。((2)につづく)  (鎌田、02/22/2017)

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