すべてがネットにつながるIoT(いわゆるモノのインターネット)は、産業と社会に「破壊的」な影響を与えると言われている。出版におけるIoTも例外ではないことになる。そしていま出版のIoTと目されているのがアマゾンAlexa、Google Home のような「音声エージェント」である。欧米の出版界はこの新しい現実に対応しようとしている。
ユーザー1,000万人を超えた音声エージェント
音声エージェント・デバイス(Wi-Fiスピーカー+α)の販売統計はなく、信頼できる推定はない。しかし、新市場の立ち上りを思わせるものではある。VoiceLabsの推計では、アマゾンは2016年に前年の4倍を売上げ、Googleも負けていないようだ。両社のサードパーティ製品も爆発的に増えている。2015年のEchoが100万台あまりとすれば、2016年は400万台、Googleもそれを追走して合計で1,000万のオーダーになったと推定される。
The Booksellerのアダム・ジンジャリー氏は音声エージェントが最も結びつきやすいポッドキャストの利用が急増していることに注目し、これがA-Bookと反応し、「本」にも結び付くというシナリオを描いている。Edison Researchの調査によれば、2015-2016で米国のポッドキャストの聴取者は23%の増加を示して5,700万人に達し、2013年比では75%にもなる。これまでのところはモバイルデバイスが中心だが、Echoなどとともに家庭に入ってくることは十分にあり得ると見られる。同じように、音声エージェントも、まだ基本機能の利用が中心で、メディアの消費などに定着するのは今年以降のようだ。
ポッドキャスト+音声エージェントが出版IoTの起爆剤となることを予想して、アマゾンやAudibleだけでなく、出版社やメディア関係者が動き出している。米国のジャーナリスト、ダン・カーリンの 'Hardcore History'、同じくジャーナリストでラジオ・パーソナリティ、セーラ・コーニッグの 'Serial'はDLが数千万回に達する大ヒットとなった。内容的にもしっかりしたもので、定評あるプロフェッショナルの手によるこのメディアの可能性を疑う声は聞かれない。
英国のガーディアン紙は Guardian’s Short Story Podcastという短編の朗読コンテンツを流して人気を得ている。もともとラジオが文学の大衆化に大きな役割を果たした伝統もあり、聴く読書の復活は自然な成り行きだろう。◆ (鎌田、02/23/2017)
参考記事
- Arms Race: Amazon's Echo And Google's Home Grew Exponentially This Christmas Arms Race: Amazon's Echo And Google's Home Grew Exponentially This Christmas, John Koetsier, Forbes, 12/27/2016
- Publishers, meet Alexa: voice search is this year's disruptive force, By Adam Gingery, Thebookseller.com, 01/30/2017
- People Aren't Using Many Of Amazon And Google's Home Voice Apps, Report Says, By Jason Del Rey, Wbur, 01/24/2017