AEが解明した米国商業出版の全体像:(1)構図

DBW今年のDigital Book World (DBW)では、AuthorEarnings.com (AE)のデータ・ガイが基調講演で登場し、2016年の米国商業出版を定量的、マクロ的に分析した講演を行った。こうした役割は、これまでニールセンやBISGなどの専門統計機関のトップアナリストが果たしてきたものであり、DGがこれを語ることに感慨を禁じ得ない。

「見えない市場」の可視化と統合モデル

DG0201ニールセンが米国の書籍データサービスを売却したことをお伝えしたが、これも既存の統計システムが市場の現実を反映できなくなった結果だ。AEは「著者のためのビジネスモデル選択」のためのデータを追求することで、従来統計とまったく別の方法(つまり出版社/書店の販売データに代わるアマゾン・データの解析)によって、初めてインディーズ/アマゾンを中心とする「見えない市場」の可視化に成功し、2年以上にわたって精度の向上とともに、「見えている市場」との統合によるマクロ分析に努めてきた。

昨年のイベントで初めて公開の場に登場したDG(いまだ本名不詳)は、マーケット・メトリクスの専門家にしてSF作家という立場で、同じく作家のヒュー・ハウィ氏とともにAEを強力な調査機関に成長させた現代のヒーローといえる。1月の講演では、昨年に公約した「データの統合によるマクロ分析」は、果たして衝撃的な内容だった。プロのアナリストや業界ジャーナリストが逃げ出すのも無理はない。「データ統合」によって何が明らかになったかは、データに即して見ていきたいが、まず統合による市場の構図、それによって発見されたことについて確認しておきたい。

市場の構図

  • 出版形態:在来出版(出版社)、インディーズ(著者出版)、アマゾン(ストア出版)
  • フォーマット:印刷本、E-Book、A-Book (オーディオブック)
  • 出版分野:フィクションとノン・フィクション、成年と青少年
  • 販売チャネル:オンラインと実書店
  • 時系列比較:2014年4月~2016年10月(3か月刻みの定点観測)

明らかになったこと(の一部)

  • E-Bookはほんとうに売れなくなったのか
  • 印刷本の復活はほんとうにあったのか
  • 消費者はどんなフォーマットを買っているのか
  • 消費者はどこで本を買っているのか
  • 出版者はいくらで売り(価格設定)、消費者はいくらで買っているのか(価格選好)

Slide21-768x576DGは、2016年に喧伝された「印刷本の復活」は、アマゾンによってもたらされた幻想であり、「E-Bookの衰退」は大出版社のシェアの消失にすぎなかったを示し、そしてマクロレベルでの問題は「オンライン」の拡大と「実書店」の衰退にあることを指摘した。これらは多くの人の実感に近いものだろう。 (鎌田、02/01/2017)

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