生活時間に定着するオーディオブック

listeners北米のA-Bookサービス Audiobooks.comが、オーディオブックの購買、利用パターンについてのサーベイの結果を公表した。市場はまだ初期段階だが、「活字本市場の影」から脱しつつある。生活時間において「聴く読書」を習慣化させ、安定的なシェアを確保するための取組みは強化されているが、データは課題と方向を示すものだ。

「週1冊、年間75冊、毎日3時間、1,000時間以上」も

主な情報は以下の通り。

  • audiobooks_banner2ユーザー当たり平均ダウンロード数の月次推移
  • 人気タイトル上位10(無料を除く)
  • ジャンル別ダウンロード
  • 人気ジャンルの変動

A_month全体として変動は少なく、静かな市場だが、出版界がAudiobook Monthとして販促を行った6月は利用が増えており、キャンペーンには反応しやすいようだ。分野的に人気があるのはフィクションで64%を占める(ノン・フィクションは36%)。ノン・フィクションが少ないのは目で確認すべき情報が少なくないためなのかが気になるが、それはさらにタイトルごとに見ないとわからないだろう。フィクションの上位は、ミステリ/スリラー、SF&F、恋愛で、ノン・フィクションは、伝記、健康、ビジネス。これらは一般的な人気ジャンルで、印刷本と大差はない。

季節的な変動はほとんどなく、例えば「ハロウィーンだからホラーを」「バレンタイン・デーにロマンスを」といった動きは見られない。ただしこれも、セット販売などのキャンペーンがないだけなのかもしれない。トップ10も活字書籍の人気タイトルに重なり、受動的である。

最もアクティブなユーザーは、2016年を通じて75冊以上を購入、1,000時間以上を聴取し、週1冊以上を読んで(聴いて)いる。1日平均2時間半以上、というのは文字の読書時間としても多いが、時間さえあれば、聴く読書はむしろ親しみやすいのかもしれない。デジタル時代に人の1日の時間シェアをどのくらい確保できるかが注目されているが、まずは1日1時間、毎月2冊くらいを習慣化してもらえれば、他のメディアに負けないだろう。レポートは、利用に関しては個人差が大きいが、かなり急速に毎日の習慣として定着しつつあると述べている。

モバイルからユビキタスへ:時間シェアをめぐる競争

time_eating_gadgetAudiobooks.comのパターンが業界全体の傾向をどの程度反映するのかは不明だが、印象としてはまだオーディオブックというメディアに即したマーケティングが未発達で、活字本の影のような域を出ていない。それでも市場は二桁成長を続けて「自律的な離陸」を遂げつつあるとすれば、市場の潜在性は相当に大きいと見るべきだろう。実際、ベンダー、出版社はそこに期待している。筆者が注目しているのは、聴取デバイスと生活時間で、A-Bookの初期段階ではスマートフォンの普及に乗って市場を拡大するが、モバイル→ユビキタス(な音響デバイス)に拡大することで、移動空間から生活空間に領域を広げて市場が本格的に立ち上がると見ている。

米国のA-Book市場については、3年連続で急成長を続け、大手出版社からも期待される存在に担ってきたということ以外、利用実態についての情報は少ない。多くのベンダー/プラットフォームから提供され、情報がほとんど共有されないためである。出版者、消費者が参考とすべき情報が不足している現状は是正されるべきで、クラウド・サービスのパイオニアであるAudiobooks.com(親会社は2003年創業のSimply Audiobooks=カナダ・オンタリオ州バーリントン市)が有用な情報の開示に一歩を踏み出したのは意義がある。 (鎌田、03/02/2017)

Scroll Up