Wattpadがアシェットと提携でA-Book進出

Hachette_Audio世界最大の読書コミュニティを擁するソーシャルリーディング・プラットフォーム Wattpadは、Hachette Audioと提携してオーディオブックの制作に乗り出すことを発表した。今年中に50点を制作する予定で、ほとんどのストア・プラットフォームに対応するほか、オンデマンドで図書館向けのCD-ROM版も提供する。

ソーシャルネットワークを背景にしたコンテンツ開発

Wattpad_banner周知のように、米国のA-Book市場は出版の各フォーマットの中でも高成長を続けており、大出版社は制作体制を強化している。他方で、制作コストの低下に伴ってインディーズもA-Bookへの関心を高めている。声優や朗読者、サウンド・エンジニアなど、かつては放送業界の周辺にしかいなかった人材もA-Bookに集まって新しいキャリア・パスを形成し始めた。資金と人材・技術の集中は、A-Bookが出版のフロンティアとして認められたことを意味している。

1000-Aron-Levitz-710x473最近紹介したアマゾンと同様、Wattpad StudiosもA-Bookとビデオをコンテンツ・ビジネスの柱に育てようとしているが、Wattpadの強味は膨大な会員から得られるビッグ・データで、その活用によって可能性を最大化し、リスクを下げることを期待している。今回の提携では、HAとWattpadとの合同で編集チームを編成し、期待できそうな分野、ストーリーテラー、人気を得たタイトルを選定し、オーディオ版の原稿化を進めていくとしている。つまり単純なテキスト版の朗読・音声化ではないということのようだ。WattpadにはWattpad Starsという著者支援プログラムがあるが、それも期待される推進力の一つだ。HAの高い品質と制作力とWattpadの新しいコンテンツ/マーケティング手法がうまく融合すれば高いパフォーマンスが期待できる。(写真はWattpad Studiosのアーロン・レヴィッツ氏)

ストーリーテリングの最適化が成功の鍵

Wattpadが重視しているのは「ストーリーテリング」というコンセプト/方法論で、フィクションとノン・フィクション、演劇やビジネスプレゼンテーションといった場面を問わず、コミュニケーションにおける話の筋や構成に関するものだ。例えば、小説の場合は伝統的に、文字と本という制約を前提としていたが、同じストーリーでも映画ではそれに最適化した台本化が必要になる。オーディオブックはその中間で、単純な朗読からラジオドラマまでの表現の幅がある。Wattpadは、オーディオ化に最適なテキスト・コンテンツを、最適な表現形式に変換することを考えているわけだ。ここでは、著者のほうも放送作家的なセンスが求められるが、逆に放送作家を見つけて書き直してもらってもいい。これまでの出版の仕事とは同じでない。

筆者は、紙の本よりはラジオドラマのベースの上にオーディオブックの市場が発展すると考えている。いずれにせよ、この世界で才能を発揮できる作家は大きな成功を収めるだろう。 (鎌田、03/21/2017)

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