RBmedia というクラウド・プラットフォーム企業が米国で誕生し、「スポークン・ワード」コンテンツ・ブランドの買収を進める一環として、A-BookストアであるAudiobooks.comを買収したことを明らかにした。成長市場に投資資金が流入するのは自然なことであり、この市場への期待が高まっていることを示すものだ。
「言語オーディオ系垂直統合メディア」
Audibleに対する離れた二番手の位置にあるAudiobooks.comを買収したRBmediaは、メリーランド州ランドーヴァーに創業した企業で、「言語オーディオ・コンテンツとデジタルメディア配信技術のグローバル・リーダー」をキャッチとする同社は、8つのブランドに400名あまりの従業員。売上は「9桁」(億ドル)で、2017年中に30%以上の成長を達成するとしている。RBdigital という独自の配信プラットフォームを有し、1万以上の図書館と取引があり、提供タイトルは、E-Book、雑誌、教材など70万点に達する。Audiobooks.comは2015年に、A-Book自主出版支援の Author's Republicを立ち上げており、ACXを有するAudibleを追撃する体制を築きつつあった。
RBmediaのプロダクト・マーケティング担当責任者のジョン・シェア氏は、Audiobooks.comをこの組織に迎えたことで、出版社のRecorded BooksなどのA-Bookブランドとチャネルを有する弊社の知名度は一段と高まり、著者やエージェント、出版社などとのオーディオ出版権獲得交渉が有利になると述べている。Audibooksのイアン・スモール社長は、「スポークン・ワード」ビジネスの全領域をカバーするRBへの参加が出版社との緊密な連携を可能とし、拡大するコンシューマ市場へのアクセスを拡大する」と述べた。総合すると、オーディオブックを中心とした「スポークン・ワード」における垂直統合ビジネスモデルで一致したことになる。
キーワードは「スポークン・ワード」
「決定には何の躊躇もなかった」というスモール社長のコメントは、「コンテンツ・プラットフォーム」というサービス機能が、アマゾン一極集中が続く現在のコンテンツ市場では業態として成り立たないという認識を示したものと見られる。日本のCCCが徳間書店を買収したのと同じ発想かもしれない。これについては別に検討してみたいが、製造業の「水平展開」が進んできた中でコンテンツの「垂直統合」に活路を求めるのは、アップルのようなユニークなデバイス環境を背景にした場合を例外として、必ずしも見通しがあるわけではない。小さなチャネルは少ない売上を意味するからである。
プラットフォームの継続可能性は高まるとしても、他方で版権ビジネスの機会が縮小するので成長の可能性は縮小する。コンテンツには「メガヒット」という魅力があるが、確率は低い。データ・マーケティングは、アマゾンやWattpadのような膨大な数を背景にしたほうが有利となるのが自然だ。それを超えるには、さらにコンテンツとオーディエンスをつなぐコンテクストの深部に光を当てる革新的な手法が必要となる。◆ (鎌田、04/12/2017)
- RBmedia launches with focus on digital media, acquires Audiobooks.com, by Darrell Etherington, TechCrunch, 04/11/2017
- RBmedia launches digital media distribution platform, acquires Audiobooks.com, by TNM News, 04/12/2017
- Audiobook Sector Grows to Include RBmedia, A New Content and Distribution Company, By Beth Bacon, Digital Book World, 04/11/2017
- Trending Up: What’s Fueling and Feeding the Audiobook Boom?, By Beth Bacon, Digital Book World, 04/11/2017