英国の小出版社がKickstarter で9,500万円調達

NIP英国の社員共有出版社 New Internationalist Publishing (NIP)は4月17日、先月からKickstarter で行っていた35日間の資金調達が成功し、61万ドルの募集目標額を超過達成したことを明らかにした。個々の出版プロジェクトではなく、出版社じたいのステークを対象とするのはめずらしいが、これが成功したのはなぜだろうか。

コミュニティ出版社が事業拡大にKickstarter を利用

NIP_logo出版には事業性と同時に社会性というユニークな側面があり、「1冊の本」「シリーズ」を募金対象とする企画はこれまでにも行われている。NIPはその延長ということなのだが、この出版社が期待を集めたのはなぜだろうか。NIPはスタートアップではなく、1973年に雑誌 New Internationalistを創刊、1982年から年間20点ほどの書籍の出版を行っており、数十年にわたって北米でも配本している。社員がオーナーということもあり、出版の独立という旗幟を鮮明にした活動で知られていた。もともとソーシャルなのだ。

community-share-project-badge資金公募キャンペーンでは、60ドルを支払う人が「コミュニティ・シェア」を得る。これは引出し、売却が可能な株式で、保有者は編集方針などに対する発言権/投票権を得る。この種の株式は、パブや文化財の保存、スポーツクラブ支援などで伝統的に使われてきたコミュニティ・ファンディングのスタイルだ。Kickstarter と結びつけたやり方は斬新なものだと思われる。コミュニティ所有の出版社が、著名人が協力することで幅広いクラウド・ファンディングの利点をフルに生かす方式は、さらに広がるかもしれない。

キャンペーンは3月1日に開始され、金額は最低60ドルから最高37,600ドルと幅がある。活動には、以前からこの出版社と縁のあった有名女優のエマ・トンプソン、小説家のA.L.ケネディ、政治評論家のジョージ・モンビオット、音楽家のジャーヴィス・コッカーなどが協力した。今週初めには、全世界の34万人から87万6,269ドルの基金の申し出を得たと発表。これは目標額を40%上回っている。上記の有名人以外にも、ジャーナリストで映画監督のジョン・ピルジャー、国際報道記者のリンジー・ヒルサム、ミュージシャンのビリー・ブラッグ、社会活動家のベニー・ウェンダといった、メディアと出版に関係する著名人が協力している。

メディア状況への危機感が期待を集める

188122-55d04d21a29d05d6ac08e5630a191269キャンペーンに協力したのは出版者との関係が深い人々で、たんなる社交による協力ではなく、ステークホルダーとしてコミットする意思を明確にしている。すべて今日のメディアと出版の現状、とくに商業主義や偽ニュースの横行などに危機感を抱いていることで、幅広い期待を集め、支持につながったと思われる。筆者なりに成功要因をまとめると、以下のようになる。

  • 有志による出版の実績
  • 各界著名人の自発的参加
  • 商業メディアの現状への危機感
  • コミュニティ・シェアとクラウド・ファンディングの融合

NIPのヘイゼル・ヒーリー共同編集長は、この結果は「数千人もの人々が、世界を知り変革する助けになる独立したメディアと出版を熱烈に支持していることを示しています」と述べている。また、販売・マーケティング担当のダン・レイモンド-バーカー氏は、Publishers Weeklyに対して、New Internationalistは野心的な計画を実行に移そうとしている、と述べ、新しいテクノロジーやスタッフと著者への投資、新しいブランドの立上げ、協業関係の樹立などについて数週間のうちに発表することを確認した。 (鎌田、04/18/2017)

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