ポッドキャストと出版 (1):遅咲きのネット・メディア

podcast-280x150米国でオンデマンド・オーディオ放送「ポッドキャスト」が爆発的と形容される広がりを見せ始めたことから、出版社がこれをどう利用すべきかという議論が活発になっている。すでにオーディオブックなどに関連して大手からスタートアップまでの取組みが行われているが、ビジネスモデルはそう簡単なものではないようだ。

「呉下の阿蒙に非ず」

Podcast3ポッドキャストが最初に注目されたのはかなり以前のことだが、メディアビジネスの世界で注目されるようになったのは、米国でも比較的最近のことで、ほとんど10年近く、鳴かず飛ばずの状態だった。筆者なども久しく忘れていた。

メディアの評価はコンテンツの質で決まる部分が多く、音だけのポッドキャストの場合はコンテンツの注目度と品質がラジオ放送の水準以下であればどうしようもない。デジタル出版のMVP Media(アリゾナ州フェニックス)のロン・マテイコ社長によれば、2004年当時についたイメージがよくなかったようだ(Publishing Executive, 08/01/2015)。もともとラジオを重視しない日本でこれが無視されたのも無理はない。

昔よく聞かされた故事成語に「士別れて三日、即ち更に刮目して相待すべし」というのがある。三国志演義では呉の名将・呂蒙の言葉ということになっているが、十年も経てばポッドキャストが一変しても不思議ではない。ここ数年で面目を一新し、魯粛をして「呉下の阿蒙に非ず」と言わしめたものとなっている。

有望市場として認知されたのは2015年

podcast_listeners2015年2月にEdison Researchが発表したデータは、12歳以上の米国人の8,900万人がポッドキャストに接したことがあり、4,600万人が月1回以上、2,700万人が週1回以上聴き、平均的には毎週6回聴き、15%が週11回以上聴いている、としていた。これはポッドキャスト史上最高の数字だったが、これが有望市場として認知を受けた最初だったと思われる。ポッドキャストが機能的に拡張したわけではなく、価値のあるコンテンツが蓄積し、それが評価され拡散した結果だ。だからブーム性はない。

放送、出版、ニュース系でポッドキャスト・コンテンツの発信が拡大し、聴取者が爆発的に拡大を始めている。簡単に言ってしまえば、「ポッドキャスト放送局」と広告配信システムが噛み合うビジネスモデルが構築されたことで、おカネと人材が流入を始め、オーディオブックなどの音声言語タイトルが独自のコンテンツとして育っている。音声エージェントなどの利用環境も整ったことで、さらに成長することは間違いないだろう。(1) 参入障壁がなく、(2) 発信側の設備投資も受信側のデバイスも不要、(3) 従来型コンテンツの流用が可能で、(4) オーディオブック、ラジオ放送と親和性があり、ビジネスモデルがオープン(広告、配信契約)といった特徴はほかにない。

ポッドキャストには、書籍と雑誌の出版社、アマゾンなどのオーディオブック・プラットフォーム、ラジオ放送と地域メディアなどが参入を行っており、その点ではE-Bookよりもよほど競争的な市場ということが出来る。→つづく  (鎌田、05/25/2017)

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