今週もアマゾンのニュースは途切れることがない。米国の高級食品スーパー Whole Foodsを137億ドルで買収。プライム会員の米国世帯普及率が64%に達し、Kindle Paperwhite 3にKindle Unlimited 6ヵ月無料試読のセット販売を開始。Amazon Booksは8番目の店舗を開店。「アマゾン恐怖銘柄指数」は急落した。
オンラインからO2Oへ
ちなみに「アマゾン恐怖銘柄指数」(Death by Amazon, DbA)とは、米国の投資情報会社が設定したもので「アマゾンの収益拡大や新規事業参入、買収などの躍進の影響を受け、業績が悪化すると見込まれる有力小売関連企業54社で構成」し、Barnes & Nobleや J.C. Pennyなどが含まれる。本の通販から出発してコマースとコンテンツに展開、オンラインからリアルに、米国から新興国市場まで果てしなく拡大するビジネスモデルは、文字通り、止まるところを知らない。
最近では、情報接触行動と購買行動をつなぐ、いわゆるO2O (Online to Offline)マーケティングの利点を生かす戦略を推進しているのが特徴で、大胆に陳列点数を絞り込んだAmazon Booksはその典型だ。Kindle Unlimitedでは複雑な定額制ビジネスモデルを軌道に乗せた。ABもKUもプライムを前提としたもので、同時にプライムの持続的な会員拡大に貢献するようになっている。隙もなければ無駄もない。最も人間的な感情である自己満足とも無縁なところが強味だろう。
アマゾンという持続可能なシステム
筆者は主にメディアとIT (R&D)、マーケティングからウォッチしてきたが、アマゾンというシンプルな「システムあるいは思想」が、いかに理解されてこなかったかにしばしば驚かされる。その最たるものが、最初にアマゾンを「ウォルマートのコマース版」と見立てた出版界で、この想定はまったく誤りというわけではないのだが、アマゾンはウォルマートから多くのものを学び、それを超える永続性のあるビジネスモデルを構築しつつあることを理解しなかったし、KindleでE-Bookの市場をつくった意図を過小評価した。
メディア企業はDbA指数の対象には入っていない。それは「収益源の大半をネットではなくリアルの店舗から確保し、販売する商品は他社の製品が中心である」という条件に合致しないからだ。いまや出版は「収益源の大半をネットで確保し、自社商品を販売する」という点でアマゾンとシナジーを保てるビジネスだ。発想を変えればパートナーであることに気づくだろう。◆ (鎌田、06/20/2017)