利用課金モデルの「欠陥」と課題

bills大手出版社の参加で、出版社側の注目が高まってきた図書館の利用課金モデルだが、導入した図書館の側では期待が幻滅に代わった例もみられる、とThe Digital Reader (06/26)が伝えている。予想通りだが、図書館側の負担と出版社の収益をバランスさせるモデルの開発がうまくできないと、ここでもアマゾンが解決してしまいそうだ。

課金モデルの落とし穴:「利用上限」が早く来た

budgetネイト・ホフェルダー氏によると、図書館関係者が pay-per-loan に関心を持ったのは、これによって利用率が低いタイトルを取得するために支払うコストが浮くと考えたためだが、毎月の請求書を受取ってから、期待は幻滅に変わったという。利用されたタイトルによる意外なコスト増をもたらしたためである。多くの図書館は、Hooplaなどの課金モデルに上限を設定しているが、利用者ごとの毎月の借出し可能回数に制限を設ける図書館もあり、毎日の利用回数を制限する図書館もある。

サンフランシスコの北にある、カリフォルニア州ソノマ郡図書館は後者、サンノゼ図書館(SJPL)は前者(一人毎月6点)を採用している。SJPLは利用者に平等なシステムがよいと考えたのだが、利用回数は当初設定した8点を6点に減らす必要に迫られた。毎日の貸出制限を設定している図書館は、利用回数の上限が想定していたより早く達し、さらに早まることに頭を悩ませている。オハイオ州北部の43の図書館で構成するコンソーシアムCLEVNETはHooplaを1年間採用したが、予算の倍に達したために廃止した。

「利用した分だけ」というモデルには合理性がある。しかし、出版社、貸出側、そしてコストを負担する図書館の三者にとって最適な料金決定メカニズムを作り出すことは簡単ではない。A. 版権所有者、B. 一次サービス (Hoopla)、C. 二次サービス(図書館)を当事者として、実際の利用者(読者)のニーズが不明な中で料金と提供条件を決めなければならないからだ。図書館は基本的に地域の利用者 (patron)および納税者のために存在し、費用を負担する非営利機関であり、Aは別の本業(書籍販売)を持ち、Bは利用を斡旋する広域のブローカーで、A~Cの三者が納得し、利用者が喜ぶ価格設定は簡単に決められるものではない。

料金モデルの開発は簡単ではなかった

win-winサービス自体はA~B間で取決めてスタートし、Cは(未利用分の)コスト削減の可能性だけを見て契約するが、利用者は(いつに変わらず)1タイトル1名という制限は外されているので、利用分とそのコストは当然ながらハネ上がり、それは図書館関係者が期待していた仮想的な削減分を圧倒する。どうも、図書館関係者は長年、紙の本の仕入れに慣れ切ったせいで、そして課金制のゲームなどは使ったこともなかったせいで、子供のアプリの利用料に仰天する保護者のようなことになってしまったもののようだ。

利用課金には合理性がある。しかし、それを生かせるかどうかは運用方法しだいで、料金モデルを必要とする。二者間では折り合いがつくモデルが描きやすいが、三者となると格段に難しくなる。しかも、図書館は直接の利用者ではなく「予算」しか持っていない。放っておけば、別の二者が予算を手際よく分配してしまうだけになり、利用者の不満が高まるだろう。結局、まだこのモデルはまったく未完成なのだ。正解を求めるにはビジネス・エンジニアリングが必要で、ユーザーの利用実態や体験評価を反映したAIモデルを開発しなければならない。 (鎌田、06/29/2017)

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