分裂した2つの世界のベストセラー

puzzlePublishers Weekly (John Maher, 07/07)は、今年米国の上半期ベストセラーを印刷本(BookScan)とE-Book(Kindle 20)で比較し、後者でアマゾン出版 (AP)のタイトルが12点を占めたことを指摘している。APは2011年頃に活動を開始したが、E-Bookはビッグファイブを圧倒する存在になったことになる。

Kindle世界ではアマゾン出版本が6割を占める

48108-v1-600x今年前半は大ヒットはなかったものの、BookScanによる印刷本の売上はそこそこであったと伝えられる。数年前までの常識では、印刷本のE-Book版が同じようにベストセラー・ランクを形成していたが、変わり始めたのはインディーズがKindleベストセラーの常連として登場し、次いでAP傘下の1ダースあまりのブランドが本格的に機能し始めた2014-15年だ。ちょうど大手出版社がアマゾンとの契約を委託制に切替えて印刷本をもしのぐ定価を設定したこともあり、Kindleではインディーズ本とAP本が目につくようになった。そして今年前半、AP本はKindleトップ20位の60%を占めたわけである。

Kindleランキングは、米国E-Book市場の9割近くを占めるKindleストアだけでなく、Kindle Unlimited (KU)、Prime Reading (PR)での完読者数を販売数に加えたことで一気にタイトルを増やしたものと思われる。書店で強い大出版社と、自社チャネルで強いアマゾンを比較するためには、いくつかの推定が必要で、年末までには出てくるだろうが、APが実質的に大手に並ぶ販売力を持ち、著者を中心とした出版界への影響を強めることは間違いないと見られる。

周知のように、書店にボイコットされているAPのタイトルは、BSランキングには登場せず、印刷本を価格的に優遇している大手出版社のタイトルは、Kindleのランキングでは低めに出る傾向がある。

今年前半の印刷本ベストセラー第一位は、ドクター・スース定番の絵本 'Oh, the Places You’ll Go!' by Dr. Seuss。Kindleではジョージ・オーウェルの古典『1984』。どちらも古いものだ。

印刷本とKindleランキングで共通しているのは、マーガレット・アトウッドのディストピア旧作 'The Handmaid’s Tale', 1985, by Margaret Atwood, HMH) [BS=#7, K=#1]とジョージ・オーウェルの古典『1984』(G.O., 1949) [BS=#14, K=#11]のみで、『ハリー・ポッターと賢者の石』はアマゾンのみ6位にランクされている。つまり、奇しくも2つのディストピア作品を除いて、フォーマットによって売れ筋が違ってきたことになる。この読み方は難しい。 (鎌田、07/11/2017)

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