ケンブリッジ大学出版が中国検閲を拒否

China-Quarterly-cover-lined-ftw英国のケンブリッジ大学出版(CUP)は、8月18日に中国政府の要請を受けて行われた中国関係の論文315点(いずれもThe China Quarterly誌所載)へのアクセス禁止措置を撤回し、原状を回復したことを発表した。ジュネーヴの国際出版連合(IPA)はCUPの決定を支持する声明を発表。昨日開催された北京ブックフェアが政治化することは避けられなくなった。

自由と「政治」

BIBF2017CUPが出版し、いったんは検閲を受け容れた中国関係論文とは、領土問題に関する中国政府の公式見解に反するものと見られるが、学術研究の自由と言論出版の自由を尊重する欧米の言論界と学界から「検閲の輸出容認」との批判を浴びて撤回した。CUP関係者は北京ブックフェア(BIBF)でのスピーチをキャンセルしたと伝えられる。

中国の出版市場が年々拡大して存在が大きくなり、厳密な国家管理の下にあるなど市場環境の異なる中国の出版業界との関係が問題となってきていたので、この事態は十分に予想されたことである。むしろBIBFのタイミングを狙って「キャンペーン」が仕組まれた可能性は強い。筆者は2015年にフランクフルト・フェアが英国在住の作家サルマン・ラシュディ氏を基調講演者としたことでイラン出版関係者を(事実上)ボイコットに追い込んだケースを想起する(奇しくもBIBFの招待国はイラン)。

freedom学術研究の自由と言論出版の自由は、著作権などと同じく近代社会の重要な原理であり、基本的に、そして適切な形で尊重されるべきものだ。しかしそれだけに「原理」は常に社会や国際関係のコンテクストのなかにあり、政治的性質を帯びることは避けられない。「原理主義」的議論にはつねに注意しなければならないだろう。逆に中国は歴史的に政治優先を「原理」としてきた伝統があり、現在はそれに注意深く配慮しつつ近代の原理を受け容れることで世界的な大国(あるいは大市場)への道を歩んでいる。

思考停止を招くあらゆる種類の「原理」主義は、知性と進歩の敵である。CUPが中国政府の要請を受け容れるのも拒否するのも自由で、それは商取引上の問題として英国の法律で保護されている。「出版の自由」問題は、世界出版連合への中国加盟問題で一部の人々から提起され、また蒸し返されるだろう。IPAの決定は「市場」的なもので、これも出版が(政治と経済の中で)社会的な機能を果たすことの証明でもある。 (鎌田、08/24/2017)

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