マンガ+写真集を除いた「電子書籍」の実力

R500206-01_ebook2017_h_kyo_cs6.inddインプレス総合研究所は7月31日、2016年度の電子書籍ビジネス市場の動向をまとめた『電子書籍ビジネス調査報告書2017』を発売した。市場は前年比24.7%増の1,976億円に拡大、電子雑誌(302億円)を合わせた規模は2,238億円に達したとしている。伸び率は20%台を維持しており、安定してはいるが波動が感じられない。

マンガ8割、活字は?

インプレスの数字は暦年ではなく年度でとっているので、出版科学研究所などの数字とはズレがある。また8割近くを占めるコミックを含んでいるので、カテゴリー的としての国際比較には適さないといった問題がある。文芸・実用書・写真集などを「文字もの等」として一括するのは、「電子書籍」というものの認識に、出版社が発行し、書店が販売してきたものの電子対応物、という思い込みがあり、かつ本来の活字出版物があまりに少ないという現実があると思われる。しかしマンガや写真集を除いた、知識情報を主体とした本が自力でどのくらい売れるのかが分からないと活字出版関係者と読者には困るのだ。

Imprs_rep01活字はなぜ売れていないのだろうか。活字書籍の出版状況(新刊/復刊点数、分野別内訳、印刷版の有無、発売価格(印刷版との違い)、実売部数、ベストセラー動向、ケーススタディ、翻訳本…。レポートに期待したいデータは多いが、それらは国際的に比較可能なE-Book市場を解明するために必要なものだ。「電子書籍」はなぜ売れていないのだろうか。筆者は、商品となっているものが多くなく、また消費者の望む水準より価格が高いためだと考えている。

Imprs_rep022003年以来続いてきたインプレスのレポートは14回目となった。時系列でE-Bookという新しい市場を萌芽期からフォローしたものとしては貴重なものだが、いまいち胸に響かないのは、いつもあまりに「平穏」だからだろう。

新製品やサービスの登場、消費者の間でのブームなどを反映した生きた市場のデータには、波や揺れが必ず読み取れるはずだが、このレポートの数字は、まるで価格統制の行き届いた計画経済下の「管理された市場」のように安定しすぎている。つまり、日本の「電子書籍ビジネス」は、いまだによく足並みを揃えた出版社たちによって「管理」され、粛々と拡大しているということなのだろう。だからイノベーション曲線を読み取れるものとはならない。  (鎌田、08/03/2017)

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