Kickstarterと出版ファンディングの可能性

Kickstarter_bannerKickstarter 日本版が9月13日に公開され、約650のプロジェクトが公開されている。出版関連はコミックも含めてかなりの数を占めるものと期待される。注目は「北斗の拳(究極版全18巻)+ 我が背に乗る者(特別読切)x 日米版」で、バッカー数432ながら、すでにファンディングゴール (FG) の300万円を軽くクリアした。

『北斗の拳・究極版』と新しい「電子本」

言うまでもなく、デフレ時代の出版プロジェクトの最初で最大の難関は「資金の調達」で、それはいくらデジタル・ファーストで「版」の作成コストが安くなっても変わらない。一般的に、出版のファンディングの目的は、(1)企画意図への理解と期待の醸成、(2)予約購読者の確保、(3)印刷・造本などのための資金確保があるが、それ以前に、数ヵ月はかかる執筆・編集・制作の期間の著者やクリエイティブ・スタッフの生活費はどうするのかが問題だろう(それは出版社でも同じことだ)。米国の出版系プロジェクトではそのことを隠そうとはしていない。

『北斗の拳・究極版』は、印刷本のような造本、A5サイズ・見開き530g、300dpiの専用E-Readerのデジタルで全巻読破、というユニークな読書体験を提供するプロジェクトで、こうした「専用E-Book」は筆者もかつて考えたこともあるが、個人全集やオーディオ版併録などバリエーションが考えられる。要は、読者からして、価格が1万円以上となるので物理的な実体は欲しいが、全巻を書架に置くことは難しく、ましてや持ち歩けない。専用書架までつけた印刷版全集の億単位のコストの恐怖と重圧を知る出版社からすれば、専用E-Bookは現実的なゴールとなるだろう。例えば、版権が切れた吉川英治版『三国志』をベースにした専用E-Readerをパッケージすることはそう遠くない。

本はコンテンツとコンテナが組合わさって商品になり、それは印刷本もE-Bookも本質的に変わらない。KindleやKoboはストアが提供するコンテナを使って読むものだが、出版社が提供するコンテナもあり得るし、『北斗の拳』のように、コンテンツに最適化されたコンテナに価値が認められれば、一体化させるメリットもある。E-Inkパネルは折り曲げ可能になったことで印刷紙に接近し、それによって「紙」に近づくだろう。出版社がデジタル時代の「知識・情報のパッケージ化」を実現することは、むしろ自然なことだとおもう。 (鎌田、09/14/2017)

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