米国出版界の変貌(1):沈黙する出版社

writers著者から見て、出版の世界がどう変わったのかについて、日本でも人気があるクリス・キャサリーン・ラッシュ氏がブログで貴重な観察と分析を述べている。在来出版社はそれまで売上げに貢献してきた作家たちとの関係を減らし、出版点数を絞り込んだ。機会を失った著者たちはE-Bookに市場を求めた。

不況で激減した著者収入

KKR2005年当時、出版界は平穏無事で、関係者は少なくとも5年はその状態が続くと考えていた。つまり、売上金額が大きい一部のベストセラー本と、売上は少ないが点数は多く、採算に乗っているミッドリスト、そしてそこに達しない不採算本から成る秩序の安定ということだ。

ベストセラーが多いのは大手出版社で、書店のスペースにも影響するから、この格差は大きい。大ざっぱに著者の階層別でいうと、ダン・ブラウンやジョン・グリシャムのような契約金7桁(100万ドル)クラスの大スターを頂点に、6桁(10万ドル)クラスのミッドリスト、5桁クラスがピラミッドを形成する秩序ということになる。職業作家を続けていくためには、年収で5万ドル以上は必要で、家族とそこそこの生活を営むには20万ドル以上、成功者の気分を味わうには100万ドルといったところか。伝統的な出版経営では、カタログに広がりと継続性ををもたらすミッドリストの著者が重視されてきた。そのためには新しい個性を発見し、育て、売出す努力が欠かせず、結果として失敗も覚悟しなければならない。出版社が著者や読者から尊敬されてきたのはそのためと言う人もいる。

出版社の「沈黙という名の拒絶」

ラッシュ氏によれば、この安定はほぼ2007年以降急速に失われ、やがて著者たちの収入は半減し、ミッドリストはおろかベストセラー・ライターも容易に出版社との契約が取れなくなっているという。しかも、こうした出版社の(暗黙の)方針変更による状況の変化に、ほとんどの著者たちは気づくのが遅れた。新しいプランについて付き合いのある編集者に電話をしても返事もくれない。彼女は、「新しい市場のいちばん嫌な製品は沈黙という名の拒絶だった」と述べている。6桁クラスのライターが最も大きな打撃を受けた。これは既刊本の絶版化と新企画の停止という形だが、ラッシュ氏にとっても衝撃が大きかったようだ。

silence2変化の最大の原因が、2007年以降の世界金融危機によって可処分所得の減少と消費の減退が出版業界を襲ったことにあることは明らかだろう。出版社は慌てて生産の縮小、在庫の圧縮、新規開発の停止、といった方向に(かなり身勝手に)動いた。出版社の対応が決定的にまずかったのは、メディアの歴史的転換期にあって著者と読者のためになすべきことをせず「非ソーシャル」な対応に終始してしまったことだと思われる。 (鎌田、01/20/2017)

Print Friendly
Send to Kindle

Share

Speak Your Mind

*