クラウドファンディング出版の可能性:(1)公共性

usagi出版資金の調達のためにKickstarter のようなクラウドソースを利用するのは、日本でもかなり広がりそうだが、人気作家の中村うさぎ氏が社会的キャンペーンの性格を持つ2冊のムックの出版プロジェクトをポット出版プラスとともに進めている。英国ではLGBTの著者が、多くの出版社から30回以上も「ゲイすぎ」として却下された原稿を自主出版する。

中村うさぎ氏の公共問題啓発ムック

584791a1-b02c-4abd-9022-1b0c0a7f167d中村うさぎ氏自らが編集兼発行人となり、ポット出版プラス(沢辺 均代表)が販売を担当するプロジェクトは、「売春の非犯罪化」と「表現規制反対」についての2点のムックを発行するもので、ファンディング・サイトはCAMPFIRE。昨年12月の公募から2か月あまりで163万円を調達し、前者は『エッチなお仕事なぜいけないの? 売春の是非を考える本 』(9月12日発売)として刊行された。これらは社会的に意識されても議論されることが多くない問題に対して、明確な主張を持つ編著者が独自の視点で議論をオーガナイズしたものだ。「なぜ出版社が」とも思われるが、おそらく趣旨を聞いて腰が引けた出版社が多いことは想像に難くない。こうしたプロジェクトが提案され、成立したことは意義が大きい。

「表現規制反対」のほうは、現行憲法21条(表現の自由)を「前項の規定にかかわらず、公益や公の秩序」を害する活動を違法とする"加憲”型改憲によって事実上無効化する自民党の改憲案に反対の論陣を張るもの。この問題は、権力を規制する憲法に、公=社会=国民を自由に逆規定する存在としての「自己規定的権力」を(非明示的に)導入する根本的な変更だが、改憲を主導する「権力」そのものを相手にすることになるせいか、これまでのところメディアは扱いかねているように見える。中村うさぎ氏は、権利の行使によってそれを守る運動をソーシャルな出版に乗り出したわけで、それが最も有効な手段といえる。

筆者が気になるのは、いまのところこの出版プロジェクトが「ムック」というフォーマットに限定されており、ファンディングだけがデジタル、あとは従来方式という、高コストで無駄の多い方式をとっていることだ。公共的出版において、内容は可能な限り広く、社会的に共有されるべきものであり、印刷版は必須としても、デジタル(ベストはWeb)をベースとすべきものだろう。その理由については別に述べる。 (鎌田、10/12/2017)

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