デジタルの脅威は「外」からだった

media_handling出版界は、これまでデジタルを内なる脅威とみて嫌悪してきた。それが近視眼であることを本誌は主張してきたのだが、米国ではようやくそれが外からのものであることが認識されてきたようだ。Publishers Weeklyが出版人を対象に行った調査では、24%が「他のメディア」との競争が火急の問題であると回答した。

「本  vs. その他メディア」

decline5日本の出版界は「出版不況」「活字離れ」という名で現実から目を背けてきたが、米国の場合は敵をE-Bookに定め、印刷本市場を護持することに集中してきた。筆者はそれが明日なき「焦土戦術」であることを指摘してきたが、第二次価格戦争がアマゾンと自主出版の勝利という想定外の結果に終わってもなお、「紙の復活」の幻想に固執していた。まことに、人間のエゴとプライドが知覚を麻痺させ、現実より幻覚を信じさせる力は恐るべきものがある。2012年からほぼ5年にわたる戦役の代償は、在来出版の衰退だった。

在来出版1,200社を代表するAPAの統計によれば、2016年の総販売額は、前年から5.1%ダウンして262.4億ドルとなった。2012~2016年の5年間、前年比で上がったのは2014年だけで、市場は5年間を通じて5.3%縮小している。商業出版は2016年に前年比1.5%の上昇となっているが、5年間を通じての成長は1.3%と、まったく停滞している。Publishers Weekly (9/29)のジム・ミリオット氏は。この業界の実質的成長の欠如は、調査の中で明らかになった他メディアとの競争の激化による、と指摘している。

出版界はこれまでデジタルを内なる脅威(E-Book)に集約し、デジタル化した新旧のメディアとは見てこなかった。音楽や映画だけでなく、ニュースももはやデジタルが収入の大半を占める。いくらオーディエンスが「映画は映画館で観たい」と叫んでも、上映館のプログラムと価格に満足できない人にはデジタルしか手段はない。そしてそこにはつねに映画以外のあらゆる選択肢が用意されている。本も同じことで、特別な関心や必要がない限り、消費者の時間とお金はつねに他メディアからの争奪の対象となるだろう。

印刷本出版は構造不況メディアとなった

市場の停滞から縮小への転換は以下のことを意味する。

  • 出版はすでに構造不況メディアとなっており、毎年縮小を続ける。
  • E-Bookは版全体のの衰退を繋ぎ止めていたので、その逆ではない。

Smartphone-use-consuming-other-media2012年以降、米国出版社はシェアを犠牲にしてコストダウンに努めてきた。それが著者との関係を悪化させ、自主出版の増加を招いたことは筆者の指摘してきた通りだ。この路線の帰結は一つしかない。印刷本の制作・流通コストが劇的に下がらない限り、大出版社は賃金を圧縮するだけでは足らず、供給を減らし、卸価格を上げるという自滅的手段に出るしかない。それは多くの書店の寿命を縮めるだろう。つまり、大出版社のビジネスモデルは持続不可能ということだ。

10年以上前、アップル iPod/iTunesの破壊的な威力を目の当たりにしたジェフ・ベゾス氏は、Kindleの開発にあたって、「外からのカニバリズムの対象になるなら、内からのほうがましだ」とチームを叱咤したという。当時、印刷本はアマゾンの戦略商品だった。アマゾンは自らのために本を守ろうとしてきたが、在来出版社は書店流通を守るために本と出版を窮地に置いている。このままでは、2016年の水準も守れず、毎年5%以上の下落を経験することになるだろう。日本のように。 (鎌田、10/03/2017)

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