アマゾンは11月13日、J.R.R. トールキン (1892-1973)の大ベストセラー長編『指輪物語』の前日譚にあたる『中つ国』(Middle-earth)をもとにしたTVシリーズへの映像化に関して、版権管理団体やハーパーコリンズ社、ニューライン・シネマ社などとの間で合意に達したことを発表した。詳細は明らかでないが、契約総額は2億5,000万ドル。『スター・ウォーズ』級と言われる。
億単位のオーディエンスを目ざす
『中つ国の歴史』シリーズは、著者の死後、息子のクリストファーが編集した作品群で、量的に多く、多くの可能性があるが脚本化がどのような形になるのかは不明だ。それじたいが大きなプロジェクトになり、ファンや研究者の話題にもなるだろう。
アマゾン (Amazon Studios) が億ドル単位をオファしたのは、'Game of Thrones' (by J.R.R. Martin)でのHBOの成功を意識したものと見られている。2011年春から放送され、7シーズンを成功裏に重ねてきた『スローンズ』は、8シーズンで終了することが発表されている。重量級ファンタジーを始めるにはたしかによいタイミングだ。トールキン・エステートは、HBOとNetflixにもアプローチしていたが、アマゾンはベゾスCEOも交渉に参加し、自身の判断で決めたという。アマゾンの映像製作は、すでに何本かの受賞作をプロデュースしているが、グローバルなヒットはまだで、トールキン/指輪の未映像化作品で本格デビューするものとみられる。
アマゾンは本作で、億単位のオーディエンスを全世界で想定していると思われる。HBOの『スローンズ』(2010-2016)は、全世界で1億3,400万人(米国は約5,000万人)の定額視聴者を獲得、米国での定額配信は月額25ドルで、2016年の売上は50億ドルに達した。コストも莫大なものだったようだが、ファンタジーというコンテンツが最大どれほどのビジネスになるかを考える指標となる数字だ。少なくとも原作に関する限り、『指輪』は『スローンズ』より筋がよく、鉱脈は豊かなので、グローバルなロング・ヒットにつながりやすいと見られる。とはいえ、ビッグ・プロジェクトほど駄作、失敗作となるリスクもまた大きく、コマースなどよりも失敗する可能性は小さくない。◆ (鎌田、11/23/2017)
■『スローンズ』エピソードの米国視聴者数(百万人)