Echoを理解するための3つの鍵 (1)Echoへの道

Echo_JアマゾンEchoが日本でもリリースされ、Alexaの日本語サービスが開始された。これはメディア/コンテンツ・ビジネスのためのインタフェースでもあり、長期的に大きな影響を及ぼすことになるのだが、「AI/スピーカー」といった紹介が多く、Kindleの場合と同様その意味が認識されるには時間がかかりそうだ。そこでアマゾンの戦略をおさらいして、メディアビジネスとしての機会を考えてみたい。

想像を超えたスケールと科学的精密さ

fractal3アマゾンは首尾一貫した分かりやすい会社だ。創業から20余年、Kindleから10年。目標にも戦略にもブレがなく、それが数字にも表れている。ドラマには無縁で、ビジネスメディアの記事にしてもさぞ面白くないだろう。しかし、人間が創り上げたビジネスが、20年間同じプロポーションを保ちながら、ほぼ一定のペースで成長を続けているとしたら、それはドラマどころではない。自然の驚異であり、歴史的な大事件であるはずだ。少なくとも、インターネット・パラダイムに最適化した経営モデルとしては最初の完成されたものであり、あらゆる方面から、末永く研究対象となるだろう。

その1:書店から「何でも屋」に

Amazon_cartアマゾンが数ある「Webビジネス」の一つとしてスタートした時には「オンライン書店」と紹介された。小売ビジネスの専門家は、本という商品の特殊性(顧客と商品の離散性)から、とうてい採算が成り立たないと考えた。「いまどき本など酔狂なものを」というわけだ。効率重視の現代資本主義にあって、20世紀の終わりに印刷本やCD/DVDの通販というのはたしかに時代遅れで、その後消滅したが、ベゾス氏は最初で最後のチャンスと考えたのだろう。

アマゾンは書店から始め、着実に一大小売帝国を構築していった。あまりに特殊で一般流通に乗らない本だからこそ、消費者(の知的生活)とダイレクトに結びつくことが出来る。本の離散性は顧客データをプロファイル化するのに最適なのだが、その価値はあらゆる商品をあらゆる人に売るという途方もないゴールがあればこそで、そんな話は誰も真に受けないだろう。クラウドとインテリジェンス(学習するAI)というエンジンが、膨大な離散的な数字の山から意味を見出していった。

1990年代は、1960年代から産業的発展の軌道に乗ったITのすべての要素がほぼ開花した、たぶん稀な時期だと思われるが、アマゾンは華やかなITビジネスではなく、その応用のみに関心を持ち、新世代のITを前提にしたビジネスプロセスをデザインしていった。分散システム、サービス指向、エンタープライズ・アーキテクチャ、ビッグデータやAIを使ったマーケティング、ロジスティクスには、最初から取組んでいたが、それらは既存の大企業ではむしろ部分的にしか普及しなかったものだ。

その2:「電子書籍」「ガジェット」から「協同組合」へ

Kindle_originalアマゾンがKindleをリリースした時、出版界はこれを「電子書籍」と「ガジェット」という2つの面から紹介した。前者は出版社が商品を提供する書籍コンテンツ市場、後者は読書専用E-Readerであり、アマゾンはどちらの業界でも主役ではなかったが、全米最大の書店、コマースとして日常的に取引のある顧客を蓄えており、彼らはKindleを新しい読書の選択肢として(あるがままに)評価し、受け容れた。それまでの付き合いから、この会社が本と読者との関係を大切にする会社であることを知っていたので、紙の本やその出版社にとって危険なものではないと考えたのだ。

アマゾンはKindleを最初から「ガジェット」として考えていなかった。それは本をコアとするコンテンツ商品における消費者とのインタフェースであり、いわばサービスを実現するための「メディア」なのだ。デイブ・リンプSVPは、最近の東洋経済とのインタビューで「われわれが作っているのは、クラウドを通じて改良し続けられる製品だ。その先駆けがキンドルである。」(11/14)と述べている。

重要なことは、アマゾンがKindleをPrime (2005)と相互補完的な事業として構築したことだ。会員は一部のコンテンツを無償で楽しむことが出来る。これはより多くの消費に結びつけるための「創造的投資」だが、期待通り実現されるかどうかは、会員に委ねられる。「計算」と「相互信頼」というバランスされた一種の「消費協同組合」ともいえる。Kindleは、アマゾンと消費者との間の永続性を持った対話システムで、コンテンツは最も日常的なメッセージと言えるかも知れない。

その3:「スピーカー/マイク」から「消費エージェント」へ

Firefox_phoneさて今度はEchoである。これもKindle同様、アマゾンという巨大システムの主要パーツとなる。「スマート・スピーカー」とか、様々な言い方をされているが、どれもあてはまらないのはそのためだ。アマゾンにとって重要なことは「声メディア」あるいは「耳と口」を使ったコミュニケーションへの進出。Kindleでみたように、それには、コンテンツとガジェット、それにAIが不可欠だ。ガジェットとしては専用機と汎用機が選択肢となる。後者はスマートフォンだが、前者がどんなものになるかは分からなかった。最初に出したのは新技術を満載した Fire Phoneだが、これはあっけなく失敗した。

新しいインタフェースを既成の汎用機のモデルに載せるということが誤りであることをほとんど瞬時に理解したアマゾンは、「プランB」としてこの「スピーカー/マイク」機能を単独で商品にした。能動的なガジェットではなく、声をかけることで反応する木霊 (echo)としいう名前で、静かにデビューさせた。同時にこれを家電(ホーム・オートメーション)や自動車を含む音声インタフェースのプラットフォームとして普及させるべく、パートナー獲得に精力的に動いた。 (鎌田、011/14/2017)  (2)につづく

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