2018年のブックカバーのトレンド

camera_iphone_6s_apple表紙が売行きに影響するのは紙でもデジタルでも変わりはない。そしてプロのデザイナーの価値はかなりの確率で実証されている。米国のインディーズ出版である程度以上売れているタイトルのほとんどはプロのデザイナーと編集者が関わっている。問題はその先、どんなデザインが成功するかということだろう。まずはトレンドの確認を。

ボールド、シンプル、レトロ、そしてピンク…!?

デザインにはセンスの良し悪しのほかにトレンドというものがあり、保守的な出版人の常識として、それはつくるより従うほうが無難であるということになる。99designs のトップ・カバーデザイナー、メグ・リード氏の解説から、2018年の米国のトレンドについて 米国での傾向を紹介してみたい。

exitwestcover-e1511869842642依然ボールドが主流:タイポグラフィにおける数年来のボールド(強調文字)全盛は衰えを見せていない。表紙の大半は太文字のタイトルと著者名が占めているが、2018年はこの基調を維持しつつ、一風変わったやり方で多様性を模索する年となりそうだ。クリアな活字・色彩に代わって、手書き文字、ブラシの筆致やカラーを生かしたものが登場している。

attachment_85175091-e1511580682677そして依然シンプル:上記の反面として、要素を最小にして印象を強めるミニマリスムへの挑戦も続く。デザイン要素を一つに絞つことで、スペースを生かすというやり方で、文字はもちろん、色もパターンもほとんど使わない。これでデザイン料が稼げるかと心配するほどだが、キマると確かに悪くない。FATが典型で、真ん中のAの字が読者の好奇心を刺激する。

attachment_75761245-e1511869315161-162x250手描きデザインも人気:手描きは近頃人気のトレンドで、児童書から推理小説までジャンルを問わず使われている。とくに花などの女性的なモチーフとともに使われることが多いが、その逆のこともある。手書き文字は性別を反映しやすいことがあるらしい。

goodbye-vitamin思い出の「xx年代」風:最近の流行といえば、特定の年代への郷愁を誘うノスタルジーで、音楽、映画、TVと同様、ブックデザインも例外ではない。来年も「スローバック・スタイル」が流行するだろう。「古いものは何でもまた新しい」である。タイポグラフィ、色使いなど「ニューウェーブ」が使われる。

「ミレニアルピンク」:2016年あたりから流行を始White-lies-by-subsiststudios-477x700めたこの色は、ファッション・アイテムでは常識となっている(らしい)が、ブックカバーに進出したのも当然だろう。このピンクに正確な色定義はないが、いわゆる「女性的」なピンクというより、ニュートラルで前向きな「女性性」のようなものが感じられて好ましい。リード氏によれば、手書きフォントやラフでシンプルなグラフィックなどでバランスさせることを勧めている。

0ea8d3e4177536d7b58177fcac0f367e-e1511583641925コラージュでイメージを喚:ジャンルやテーマを問わず、よく使われるようになった。イメージを喚起するだけでなく、デジタルだけでなく、ラフな糊付けで実在感を出すのも効果的で、紙が浮いて見えるポップアップ効果も魅力的だ。

写真の多用:没個性的で相対的に高価なストックフォトに代わって、スマートフォン写真の利用が普及したおかげで、デザイナーにとっての選択肢が広がった。2018年はより効果的な写真の利用が試みられるだろう。

まだ「デジタル以前」

コンテンツ・デザインが見えない構造にフォーカスした「エディトリアル」であるのに対して、ブックカバーは、「パッケージ」に近い。両方をこなせる人は少なく、秀でた人はさらに少ない。E-Bookの場合は、三次元の個体ではないので、平面デザイン(グラフィック)に近くなってきた。それも印刷を経ずにスクリーンで完結することが多い。

将来的には3D動画の「表紙」が出てくるかと思うが、現在はまだグラフィックが主流で、レスポンシブ・デザイン(RD)すら入っていない。それは出版社のカバーが依然として「プリント・ファースト」で、そうでないデザイナーにほとんど機会が無いためだろう。私見では、デジタル・カバーはインタラクティブ/ダイナミックなものであってよいと考えているし、トレイラー(予告編)もあったほうがよいとも思う。本の「カバー」が表装や額縁としての価値を持った時代は終わったし、デジタルは別の魅力を訴求すべきと考えるからだ。 (鎌田、12/11/2017)

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