教育系出版に広がる定額制 (♥)

アマゾンが始めた定額制サービスは、Oysterなどのスタートアップの挫折を経て中堅/専門出版社に拡大し始めた。教育出版のセンゲージ社は、70教科、675コース、2万点以上を1学期間(半年)120ドルで読み放題にする Cengage Unlimited (CU)というサービスを始めた。印刷教科書価格の高騰に対しては有効だが、利用環境の最適化には時間がかかりそうだ。[全文=会員]

「90%デジタルが目標」:ビジネスモデルの大変動

Cengage UnlimitedCUは1学期120ドル、1年間180ドル、2年間240ドルで提供されるが、同社では1学期に3-4コースの指定教材を利用する平均的な利用モデルで換算すると、年間で数百ドルの節約になるとしている。学生は教材の印刷版を無償(送料7.99ドル)で借出しすることも出来る。

Cengage_open同社は10月に一部のテキストをCC-BYライセンスで提供する OpenNow というオープン教材 (OER)のイニシアティブを発表して注目を惹いていたが、同業他社の動きや定額制の導入と併せて考えれば、教材出版社がそれぞれ伝統的販売モデルから抜け出そうとしていると考えるべきだろう。センゲージ社は「2019年までに90%をデジタル」という目標を発表している。大手商業出版社はデジタルを20%以下に抑えるのが目標になっているが、教科書では紙が10%以下とはおもしろい。結局、ユーザーが問題になるのは最後ということなのだ。

米国の大学ストア団体National Association of College Storesのデータによれば、2016-17年度の学生の平均教材購入額は579ドル(必修科目)、The College Boardの推定では4年制大学で年間1,298ドルに達する。しかし、これは低めの推定で、ランキング中位以上の大学では5,000、1万ドルもざらだろう。マクロ経済学教科書で必携とされるG.マンキューの経済学原理第8版(センゲージ社)は249.95ドル、レンタルの印刷版が99.49ドル(60日)、デジタルでも76.12ドル(6ヵ月)。もちろん、この1冊で単位が取れる大学はない。

2018年には新しい動きも

textbook price米国で大学生の学費・教材費負担が問題になって久しいが、行政、教育機関、教員、出版社、学生とステークホルダーが多いために改革のイニシアティブが機能しないのはいずこも同じで、結局、印刷本のコスト上昇に加えて、レンタルや海賊版の増加で出版社の経営が悪化したことで、デジタル化への圧力が強まるようになってきた。かつて海賊版への怖れで忌避されたデジタルが、逆に管理面で評価されるようになったのは皮肉な話だが、コンテンツを扱うサービス技術が向上し、出版社のリテラシーが上がったのだと思われる。

教育関係者は、センゲージの動きが最初のもので、続々と続きが出るものとみている。まだアマゾンが高等教育分野で表立った新しい動きを見せていないのも気になるが、おそらく来年には出版社、書店、それに教育情報サービスが揃って動き出すと思われる。大学教科書市場は、専門書出版、学術出版、そしてOERのコミュニティと隣接しており、プラットフォームもコンテンツも同じように動いていくと思われる。商業出版とともに出版市場の半分を占めるこの世界のデジタル化の影響は、もちろん全体に及ぶだろう。 (鎌田、12/07/2017)

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