近づく旧出版エコシステムの解体

decline32017年の国内出版物(書籍+雑誌)販売額(予想値)が出版科学研究所から発表された。前年比7%減の1兆3,700億円と、過去最大の落込み幅。1996年をピークとして減少を続けてきた出版業界は、20年で半減した。7%もの減少を続ければ5年で1兆円を切る。産業としてのエコシステムを維持できる規模はとうに割り込んだと言えよう。

デジタル軽視と書店流通の解体

書籍よりも雑誌の下落が目立つが、それは雑誌部数の減少と書店の弱体化の悪循環の影響がより強いためで、アマゾンが書籍流通に占める割合が増加していることを示している。周知のように、出版大手の経営は雑誌/マンガ(を販売する書店)が支えており、二桁前後の下落を始めれば、5年ともたないだろう。書籍を含めた再販売価格を維持する専門流通のシステムが崩壊が近づいた。すでにアマゾンは出版社にとって「緊張」より「依存」を感じさせる関係になりつつある。

Kindleが上陸して5年、一般書籍とその流通のデジタル化は進まなかった。出版社が望まず、製作・マーケティングの体制を構築しなかった。価格は新しいコスト構造、市場のニーズを反映したものではなく、印刷本を基準とした。書籍は20世紀のままで留まろうとした。すべては大戦期に生まれた書店流通システムを維持せんがためである。成長を犠牲にしたのだが、それだけでは済まなかった。印刷本流通はその重みに耐えかねた。昨年の返本率は書籍も雑誌も40%に近い。

高い返本率は右肩上がりの市場でのみ持続でき、逆に市場が縮小するなかでの返本の重みは倍加する。その答は出版の縮小しかない。逆に社会のコミュニケーションのデジタル化はさらに進むから、その答も「脱書籍」となる。伝統的出版のエコシステムは解体に向かい、新しい出版システムを提供できない出版業界はこのビジネスから去っていくのだろう。これは幕末期まで高度な発展を遂げた木版出版が消滅した「明治20年事態」の再現である。社会とコミュニケーションがとれなくなったメディアは、緩慢にではなく急速に事業性を喪失する。日本はすでに危険な水域に入った。

在来出版社が消えても本は消えないし、出版はデジタルで必ず再出発する。誰よりも本を必要としているアマゾンもいることだし…。 (鎌田、01/04/2018)

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