Smashwords:熱狂と挫折の10年 (前)

Smashwords_logoアマゾンと協力し、また対抗しながらインディーズ出版の歴史をつくってきたSmashwordsのマーク・コーカー氏が、歴史を振り返りつつ、アマゾンKindle/KUのもとに吸収された観のある自主出版が独立性を回復するための構想を語っている。前半は「裏切られた革命」。後半はもちろん完結してはいないが、気を取り直して再開したことは素晴らしい。

自主出版者の台頭

Mark Coker10年前、著者の運命は出版社に握られていた。誰が出版物の著者になるかは彼らが決めた。出版社は印刷機・書店・読者へのゲートキーパーだった。私たちがインディーズ出版のためのツールを開発し、著者たちは自らの運命を手にし、出版の時期と方法を選択できるようになり、出版社を通さずに読者に読んでもらうことが出来る。出版におけるの権力の中心は著者の手にある。「わーい!」とコーカー氏。

しかし、民主主義も革命も、熱狂では終わらない。何かは変わったが別の現実が待っていた。

コーカーたちは2005年からSmashwordsの準備を始めたのだが、同じころアマゾンもKindleとKDPの準備を進めていた。そして2007年の暮れに立ち上げた。Smashwordsは2008年5月のスタート。ともによいスタートを切った、とコーカー氏は言う。2008年から2010年まで、E-Book市場は急拡大した。数百万人の読者がスクリーンで本を読むようになった。オンライン書店がオープンし、自主出版者に門戸を開いた(また「わーい」)。

Bezos_Chess2010年にアップルがiBooksで参入し、版権者が7割を得るシステムを導入した。それまでは出版者が希望小売価格を設定し、その35-70%を得るが小売価格は小売に任せられるという紙とほぼ同じシステムだったから、自主出版者にも大きな前進と受け止められた。アマゾンは価格決定権を失い、同時に版権者へのマージンを倍増せざるを得なかったが、Smashwordsは新しい業界標準のもとで小売パートナーを拡大することができた(「わーい」)。そして2011年にはさらにE-Book市場は急上昇し、インディーズのシェアは年々拡大していった(同上)。インディーズ作家は収入を確保し、名声を築き、自主出版者であることに職業的な誇りを持つことが出来た(同上)。

「出版の民主化がそこにあった。ではみんな幸せになれたか? 違った。」とコーカー氏は言う。「今や明らかだが、別のゲートキーパーと取引していたのだ」(「ブー」)。

「インディーズ」の没落か?

dependence2別のゲートキーパーとはもちろんアマゾン。自由を得たはずの著者たちが「商品化原理が貫徹した単一市場に読者のすべてをとりこにされた」なかで売らざるを得ないディストピアを彼は見てきた。出版するかは著者が選べるが、1社以外の小売が利益を生まない状態では選択肢はないも同然。「20年後の歴史家は、2011年12月8日を著者たちが独立性を失った日として記述するだろう。」その日を境に多くのインディーズ著者たちは独立性を失った、と彼は断定する。

KU2-280x150アマゾンは、KDP SelectでKindleとの独占契約を提案した。期間3ヵ月の自動更新だが、彼によればこれは絶妙な戦略で、多くの著者たちが「つられ」「すかされ」「引き込まれ」て最終的に懐柔されていった。そして2014年7月、Kindle Unlimitedは読者に「買わずに読む」無数の理由を与え、Selectの著者が設定する定価は意味を失った。現在、KUのインディーズ本のタイトルは100万を超えた。彼にとってはアマゾンから収入のすべてを得る著者たちは、もはやインディーズではない。

しかし、公平に見てアマゾンをゲートキーパーと呼ぶのは正しくない。合理的理由以外で出版を拒否することはないし、地主のように地代を課すわけでもない。Selectを選択した著者を特に優遇するのは、Primeの場合と同様、非難には当たらない。一人勝ちというだけだ。問題は、金持ち企業の中に「出版」を重視する人間がいないことだ。

ではここからどこへ行くのか。物語的にいうと、ここまでが前半、あるいは第2部の終わりといったところだろう。これで終わるなら話にならない。 気持ちは分かる。そもそも著者たちは、生きるため、出版し、著者となるために書いているのであって独立は二の次だ。すでに名声も収入も十分に得ているスティーブン・キングとは違う。生きることが楽ではなく、「独立」については妥協するしかないのは大人なら知っている。歴史には目的はなく、生きることの結果でしかない。コーカー氏も、今年は「後半」を論じる気になったようだ。 (鎌田、01/11/2018)

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