アマゾンの大型企画で高騰する版権市場

S_white2Wall Street Journal によれば、アマゾンがオーディオ出版権の大規模な買い付けに乗り出した。これはAudibleなどでの独占販売権を含むもので、定額サービスと結びつけることで、版権市場に大きな影響があると見られる。市場の急拡大とともに、アップルなどの新規参入によって米国のオーディオブック市場におけるアマゾンのシェアは40%台にまで低下したと言われる。

オリンピック・ヒーローの自伝に数百万ドル

S_white3今回報じられたのは米国のスノー/スケート・ボード両種目のスーパースター、ショーン・ホワイト (31)の回想録で、アマゾンは数百万ドルを投じたと言われる。ホワイトはSNSのフォロワーが150万人を超え、スポーツを超えた人気がある。金額には意外感はないが、オーディオ版は活字版より前に出すことになった。制作についての詳細(音や肉声など)は判明ししだいご紹介したい。数百万ドルという金額は、ベストセラー作家並みのもので、オーディオ版権の高騰を告げる。つまり、現在主流になりつつある「紙+デジ+音」の安易なパッケージ化を困難にするだろう。版権市場の分割・高騰はオーディオ市場の離陸の第一歩だ。

ホワイト回想録音声版は著者・読者の性格(アクティブスポーツ、ポップ音楽、冒険、ゲームのファン)とマッチしており、文章力に依存せず、大ヒットが望める。アマゾンは価格を思い切って下げたり、定額制の目玉にすることでマーケティングの武器にするだろう。また、音声出版をマルチメディア化への糸口としたいアマゾンの戦略にも一致する。

A-Bookは必ずしも活字本を前提としないし、活字と無関係に出版することも可能だ。しかし、まだそうした例は少ない。大手出版社は「紙+デジ+音」の3フォーマットをセットで版権契約を締結するポリシーを推進している。これはストアであると同時に出版社でもあるアマゾンに対する牽制として重要かつ有効なもので、アマゾン系コンテンツのシェアはまだ20%台の前半に留まっている。つまり5社合計で市場の半分あまりを占める大出版社の1社と並ぶが、その程度だ。これはアマゾンにとって必ずしも満足すべき状態ではないと見られる。そして数十億ドル単位の投資で市場を一変させようとしているのだ。

メガ出版という「大きな物語」

61NvdQNoQwL._AC_SL1392_本誌は、アマゾンが「音声コンテンツ出版」というコンセプトで新市場を開拓していると見ている。自立したオーディオは、他のフォーマットの出版と連携して全体の成長をリードすべきで、スマート・スピーカーというメディアと結びついて飛躍の機会を得た現在、それは可能だというのだろう。最近、トールキン原作の『指輪物語』の関連作品の映像化権にアマゾンが2.5億ドルを投じたことが発表されたが、大きな「物語」「語り手」には数億ドルのメガコンテンツの市場を形成することが確認されており、文字、音声、映像、ゲームを戦略的にオーガナイズしようとしているのだ。ディズニーやNETFLIXのように。

これまでアマゾンは自主出版と自社ブランド(アマゾン出版)を軌道に載せ、既存の出版チャネルに依存しないビジネス・サイクルを構築してきた。同じことは映像でも試みて成功している。巨額版権料を投じるスタイルはそれとは隔絶したように見えるが、つながっている。それは業界を超えた新しいメガ出版というものだ。これまでメディア・コングロマリットは、グローバルに様々なメディア企業を傘下に収めてきたが、有効に連携させたとは言い難い。それは20世紀の遺産としてのマスメディア/マスマーケティング・モデルの限界である。 (鎌田、02/06/2018)

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