ウォーターストーンズ起死回生のゴール

James Daunt英国最大の書店チェーン、ウォーターストーンズが見事な復活劇を演じて注目されている。300に近い店舗を持ち、それまでは規模だけで抜けた存在だったが、構造的な赤字に陥り再起不能と思われていた。しかし、2011年に経営を任せられたジェームズ・ドーント氏のリーダーシップで奇跡の完全復活。英国の出版界を狂喜させた。どんなマジックを使ったのか興味が尽きないところだ。

不可能に挑戦したドーント社長

Waterstonesウォーターストーンズ (Waterstones、WS)は、久しく赤字が続いていたが、2011年に負債総額が2億ドルを超えて倒産寸前に陥った。ロシアの銀行家・投資家のアレクサンダー・マムート氏が6,800万ドルで買い取ったが、ドーント書店 (Daunt Books)で手腕を評価されていたジェームズ・ドーント氏に経営を委ねた。彼は自らが創業した書店の経営手法を用いて、わずか数年でウォーターストーンズを黒字化した。

ジェームズ・ドーント氏は1964年生まれ。外交官のティモシー・ドーント卿の子息で、16世紀に創立された名門パブリックスクール、シャーボーン校の出身、ケンブリッジ大学では歴史を学んでいる、つまり古典的な「ジェントルマン」である。その後、クルーズ会社、J.P.モーガンなどを経てドーント書店を開業し注目を浴びることになった。

おそらく止められないアマゾンの勢いと「ロシア資本」に恐怖した出版社が、取引条件で優遇したであろうことは容易に想像がつく。アマゾンとロシアを盾に交渉するなどは、外交官の息子ドーント社長には造作もない。しかし、それは消費者と関係のないことだ。本が売れなければ意味がない。

「すべての書店は個性的で違いがなければならない」

Waterstones2ドーント社長の書店改革は2010年から始まり、筆者も注目していたが、チェーンの各店舗に「個性」を持たせる構想には半信半疑だった。ロンドンのエドワード朝風の書店であるドーント書店ならいざ知らず、300店近いウォーターストーンズの規模での成功は、成功率が低いと思われたからだ。英国がなお「危機に際して輝くリーダー」の国であることを忘れていた。

ウォーターストーンズの店舗に「個性をもたらす」というコストは、売上のかなりを占めたリース料を手放すことを意味し、年間3,500万ドルにもなった。倒産寸前の会社が手放すにしては大きすぎる。しかし、自ら頭を使って管理できるスペースはそれ以上の価値があると、ドーント社長は信じていた。これは自らの書店の成功で得た確信だ。

しかしどうやって「書店に個性」を持たせるか、どのような個性が地域に通用するのか、これらを知るのはマーケティングの領域である。そうした知恵は、ミクロには可能であっても、大規模にはデータによってしか得られないと考えられている。言うまでもなく後者の代表はアマゾンだ。ウォーターストーンズがどうやったのかは、大いに勉強する必要がある。手法化されれば、米国や日本でも使える可能性は高い。 (鎌田、02/21/2018)

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