「ヘイト」か「出版」か

HNHbloglarge-455x285今日の出版界が直面する世界的問題の一つに「ヘイト本」や「フェイク本」の問題がある。これは出版につきまとう問題で、それ自体はデジタルとは関係がないが、出版の環境が変わった現代には別の対処が求められる。英国の反レイシズム団体、Hope not Hate は、ホロコースト否定本を販売する書店のリストを公表し、撤回をもとめる運動を始めた。

「ヘイトで儲けるな!」

出版と「言論・表現の自由」「著作権の保護」が、たんなる標語による確認では終わらない時には、出版と社会のどちらか(あるいは両方)に問題が起きていることを示している。昨年5月にはアマゾンがホロコースト否定(いわゆる歴史修正主義本)本を販売しているとしてユダヤ人団体から批判され、4点をカタログから撤去し、レビューや関連本の紹介も削除した。しかし、こういう本は既成の言論に不信・不満が噴出し、いままで聞かされてきたことは嘘だった(はずだ)と考える人間が増えた結果で、ネット上での検閲は容易でも、街の書店レベルはそうはいかない。

Hope not Hate (HnH)は、タイトルと取扱い書店への行動を始めた。ターゲットは 'Did Six Million Really Die? by Richard Verrall, The Leuchter Reports by Fred Leuchter' などである。ところで英国アマゾンは問題本をリストし、なぜ販売するのか?という説明文を掲載している。

「もっと言論を!」

「書籍販売者として、アマゾンは公開言論へのアクセスの提供は、いかに不愉快かつ醜悪なものであっても、われわれの使命の一つであると考えております。憎悪に満ちた議論の矯正にはより多くの言論に優るものはなく、私たちは読者の方々にご自身の声ですべてのタイトルについての意見を、レビューやレイティングとして表明される機会を提供してまいります。」

これはビジネスに政治を持ち込まない正当な主張だろう。出版社には出版社の、書店には書店の、著者には著者の「信念」があるべきで、それを表明し、議論すべきだ。そして書店は(違法かつ反社会的でない限り)出版サポートことが出来る。その場合に「多くの言論」をサポートしないのであれば、その立場を明確にする必要があるかも知れない。

日本でも「ヘイト本」が多くなり、大手出版社ですら手を出している。議論が噴出することは出版にとってのチャンスだ。しかし、議論は生産的でも破壊的でもあり得るし、「レビュー/レイティング」もそれ自体が攻撃の道具として使われることがある。出版に関係する者が、信念と正当性を問われる機会は多くなるだろう。これからは難しい時代に入っていくことは間違いない。 (鎌田、03/22/2018)

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