著者の危機、出版社の危機

fair英国の出版業界専門誌 The Bookseller は、著者印税あるいは出版の収益配分についての出版社側と著者側それぞれの見解を掲載している。格調の高い書き出しの応酬で始まる双方の主張は一読に値するものだが、前渡金の縮小で著者の窮乏化が進む「版元・著者関係」を知る上で貴重なもので、本誌でも継続的にフォローしていきたい。

1%と99%

SoAuthors英国作家協会 (The Society of Authors)のニコラ・ソロモン事務局長と新興出版社 Profile Books のアンドリュー・フランクリン社長の見解表明に続いて、フィリップ・ジョーンズ編集長がコメントを寄せ、The Publishing Perspectives (03/14) はエージェントの見解としてアンドリュー・ロウニー氏などの意見を紹介している。2桁の利益率を誇る巨大出版社のペンギン・ランダムハウスなどはまだ参加していない。

SoAのソロモン事務局長の問題提起を単純化して言えば、「著作権管理団体ALCSの最新調査にもあるように、出版社の利益率はかつてないほど上がり、著者の収入は激減して職業生活を維持できないほどになっている。なぜ著者にもっと回さないのか」というのに対して、フランクリン社長は「出版ビジネスは複雑で、一部を除いて全体として苦しい出版社が大半。利益を出さないと払えない」ということだろう。どちらにも言い分があり、何も言わない大企業出版社だけが満足しているようだ。

高まるグローバル出版社の利益率

2014-07-10_authorsジョーンズ編集長の記憶では、30年ほど前、1995年の商業出版社の利益率は8%ほどだった。1995年のHarperCollins UKが6%、Penguin 9%、Hodder Headline 6%、Little, Brown 7%、Transworld 15%、Franklin 10%といったところ。吸収合併とグローバリゼーションが進んだことで利益率は大幅に向上し、ハーパーとペンギンはそれぞれ16%にもなった。生産と流通における統合効果は大きい。ベストセラーの高利益も大出版社に集中し、中小出版社は取り残された。著者と出版点数が増加し、一人当たりの収入は少なくなった。2013年のALCSでは平均年収は29%ダウンの1万1,000ポンドとなった。

経済格差の拡大は出版にも及んでいる。大出版社とベストセラー作家は「1%」族で、他の出版社、著者は「99%」族ということだ。雑誌の減少でライターの収入源も名前を売る機会も減少し、出版社は前渡金を減らし、規定売上に達しない分を著者の「貸し」として処理する傾向も出てきている。大出版社は稼げない作家が淘汰され、出版点数が絞り込まれることを期待しているのだろう。しかし、アマゾンはそれを嫌い、99%を取込もうとするだろう。するとビッグファイブ vs. アマゾンという形になるが、これはどう考えてもよくない構図だ。 (鎌田、03/16/2018)

参考記事

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