中国テンセントがWattpadに出資

wattpad-1なお会員の増加が続くWattpad(カナダ・トロント)は1月に5,100万ドルの資金調達を発表したが、そこに中国最大のネット企業テンセント(騰訊=タンシュン)が入っていることが注目された。資金はグローバル展開とAI(深層学習)への投資に使われる。どちらも「非アマゾン」なデジタル世界の主要企業だけにこの組合せは面白い。

巨大メディア企業がベンチャーのWattpadに出資

Tencent2世界最大のライティング・プラットフォーム、Wattpadは、2006年創業なので12年目になるが、いまだに「ベンチャー企業」を続けている。コミュニティは全世界に6,500慢人を超え、昨年は40%も増加したと発表している。アップロードされたストーリーは4億本。これだけの規模では、当然「見つけられやすさ/見つけやすさ」の問題が生じるが、AIへの投資は主にそのために使われるという。パーソナライゼーションを通じたディスカバリー問題へのアプローチは、アマゾンと共通したものだが、ユーザーと共有する「体験」のコンテクストが深くなるので、それによってサービスを開発することが出来る。Wattpadは会話スタイルのストーリー・フォーマット、Tap Originalsを立ち上げたが、これもそうしたものだ。すでに30万のストーリーが生まれている。

テンセントを出資者に加えたWattpadが狙うのは、もちろん中国市場だろう。この国の出版は、政府の管理下にあり、中国企業との合弁でなければ参入することすら容易でなく、合弁も成功の保証にならない難しいものだ。テンセントは、ゲーム、SNS、メッセージング、メディアで幅広い事業を展開しているが、E-Bookでは 中国版Kindleと言うべき China Literature(閲文集団)を傘下に持っている。640万のライター、960万点のコンテンツ、2億人近い月間アクティブユーザーを擁する大企業に成長しているが中国市場はまだ高成長を続けている。当然、Wattpadのサービス・ユーザー層と重なる。

コンテンツの中国市場とストーリーの世界市場

テンセントとしては、可能ならばWattpadを傘下に入れることで出版における「世界」進出を目指すものと思われるが、大きすぎるパートナーとWattpadがどう組むかが問題となるだろう。アレン・ラウCEOは、「エンターテインメントと出版、そして弊社と共通するストーリーテリングで大きな力を持つテンセントを出資者として迎えたことにより、市場開拓における弊社の知識と経験を拡大できることを期待しています。しかし、事業においてはテンセントはほぼ中国を向いており、一方で弊社は中国以外のほぼすべての地域で活動しています。」と述べている。

テンセント・ホールディングのマーティン・ラウ社長は「Wattpadはストーリーの話し手と愛好家による創造的なコミュニティです。エンターテインメントを見出し、つくられる方法を変えることで新進作家のための機会を提供しています。エンターテインメント産業のデジタル化とデータ化のリーダーであるWattpadを喜んで支援していきます。」と述べた。二人のラウ氏のコメントは対照的で、Wattpadは「中国」に関心があるのに対して、テンセントは「データ指向のマーケティング」というWattpadのコアテクノロジーに注目している。6,500万人のユーザーではなく、そのユーザーから最大限の価値を引き出す技術であることは重要だ。(鎌田、03/29/2018)

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