E-Bookはどこから普及するか

Pew_Research米国のメディア研究機関ピュー・リサーチ・センター(PRC)は3月8日、フォーマット別読書行動調査の結果を2年ぶりに発表した。1年以内に本を読んだことがある人(読書率)は74%で、16年調査(73%)とほぼ同水準。P-Bookは67%(+2)、E-Bookが26%(-2)、A-Bookが18%(+4)となっている。活字読書率が停滞しているなかで、A-Bookが2割に近づいたことが注目される。

デジタルは「まだ」という幻想を捨てよ

FT_18.03.07_BookReading_PrintbooksPRCの調査は今年1月3-10日、全米50州+1地区の18歳以上の米国人(2,002人)への無作為抽出サンプルによる電話調査(固定500人、携帯1,502人)として行われた。サンプルは少ないが、人口学的に厳密で統計として価値がある。米国人の約4分の3が過去12ヵ月間に本を購入しているが、点数は平均で12冊。フォーマット別では、印刷本しか読まない層は39%、E-Bookしか読まない層が7%、両方読む層は29%。

FT_18.03.06_ReadingBooksこの数字を「印刷本は健在、純デジタル派は1割未満」と読む見方は浅い。紙から先に見て変化を過小評価しているのだ。第1に、フォーマットの選択は一般的に価格やタイトル、読書のスタイルの問題で、E-Bookを読むのは必ずしも「デジタル派」だからではない。第2に、E-Bookが初めて登場したのは2008年以後であり、10年後に「印刷本のみ」という人が4割いることに不思議はない。虚心に見れば、読書層のみについてみれば、「印刷本のみ」(39%)と「E-Book」(37%)がほぼ拮抗している現在の状態は状態はかなり自然なものと思える。

PRC調査は、年齢層や学歴によるフォーマットの選好を見ている。マーケッターとしてはこちらを見るべきだろう。18-29歳では、「E-Bookを読む」が34%、「E-Bookのみ」が10%いるのに対して、50-64歳では「E-Bookを読む」が20%、「E-Bookのみ」が5%。つまり、若年層ほどE-Bookが増える傾向にある。学歴、年収、居住地域とE-Book読書率には顕著な差異がみられ、高学歴、高所得、都市住民ほどE-Bookの利用は高くなる。つまりは情報へのアクセスにおいて優位にある階層ほどデジタルを利用しているのだ。この傾向が鈍化しているとするならば、それは人々の経済的・文化的活動のレベルが低下しているからであって、けっして印刷本に執着しているためではないのである。

FT_18.03.08_BookReading_Collegegraduates出版業界は「印刷本のみ」と答える人々を忠実な「支持者」と考える発想をすぐに止めるべきだ。さもなければ縮小する市場、不活発な市場を相手にしなければならなくなるだろう。そして、いまや戦略的に重要な市場であることが明確で、E-Bookと不可分なA-Bookでも市場の主導権を取れないだろう。読書のデジタル化は、当然ながら、若く、好奇心旺盛で、豊かな層から先に普及する。それは出版界の期待とは関係がない。 (鎌田、03/20/2018)

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