「世界最大の書店」はなぜ消えるのか: (1)本という商品

220px-Barnes_&_Noble_Fifth_Ave_flagship世界最大の書店、Barnes & Noble (B&N)の大量解雇の波紋が広がっている。有効で戦略なき「選択と集中」は清算プロセス、ということは常識だが、やはりB&Nともなると意味は大きい。一つの業態が寿命を迎えたことを意味するからだ。出版社は大型書店が激減することを想定して行動しなければならないだろう。それはチャネルに与える以上の問題だ。

「売る」だけでは店舗コストを負担できなくなった

B&Nはこの業態のパイオニアでもある創業者のレナード・リッジオ氏を筆頭株主とする上場企業で、この5年ほどの間で経営は悪化し、オンラインおよびE-Bookプラットフォームへの関与を縮小、次いで「本業」とたのむ書店チェーンも縮小し、コア店舗での営業に集中してきた。昨年11月に欧州系の資産運用会社(Sandell Management Corp.) から6.5億ドルの買収提案を受けたがその際は拒絶している。700以上の店舗を擁する業界最大手にとって、この価格は安い。資産状態もブランドもかなり劣化しているようだ。(※店舗数はWikipediaによる)

現在のところ、同社からはレイオフの規模やスケジュールの詳細も発表されていない。何も確実ではないという前提で書くのだが、「社運を賭けた」はずの昨年末の商戦のさ中にレイオフが始まり、現場の仕入にも支障が出ていたということが事実なら、すでに管理不能な状態なのかもしれない。大企業の終わりは、意味不明な人事、思いつきの事業方針、方向感なきコストカット、社員全体の意欲の喪失、といった状態で始まる。出版社や書店の場合は、やはり社会的な性格の事業なので胸が痛む。同社の発表では、「業務上の必要に応じてスタッフを増減することで店舗の生産性を高め、業務の効率化を進める」と動機を説明している。

B&N_logo2経営陣にも株主にも継続への意欲が失われている以上、書店の継続を求める人々の期待は「買収・合併」しかない。しかし、同業(カナダのIndigoなど)の可能性は低く、外国資本も問題が多い。アマゾンには大型書店に進出する動機がほとんどなく、赤字事業はやらない。食品スーパーを買収したのは、生鮮品というアマゾンの欠落を埋めるシナジーが期待できるからだ。書籍という商品はおそろしいほどオンライン向きで、そのことをアマゾンほど知っている企業はないだろう。実書店の強味は「人」だが、それは不安定だし、簡単に規模を大きくできない。

しかし、「集合としての本」を通じて個性化は可能であるし、店舗デザインによって魅力的に視覚化することも可能である。IKEAのショールーム型家具ショップは一例だろう。それには、かつて専売制であった「本に依存する」商売から、紙の本を空間的にデザインすることで「体験」を付加価値とするしかないと思われる。   (鎌田、03/01/2018)

参考記事

Send to Kindle
Pocket

Share
Scroll Up