NPD社は、2017年の PubTrack Digital (PTD)のデータを発表し、米国の出版社によるE-Bookの売上が前年の14%に続いて10%ダウンしたことを伝えた。これは大手5社を含む450社のみをカバーしたもので、AAP加盟の1.300社と比べても少ない。NPDのサービスはNielsenから継承したものだが、市場の捕捉率は半分を切っていると思われる。
分裂する市場と錯綜するデータ
NPDは、BookScanの印刷本データとPTD-2018を合計して450社の「デジタル比率」を19%と計算し、2016年の21%から2ポイント下落した。フィクションのデジタル比率はなお44%だが、前年より14%減少して1億800万冊となった。逆にノンフィクションは3%増えて3,800万冊(シェア12%)。
米国の出版市場統計は流氷の海のようなもので、かつては最大規模を示していた在来出版社の市場がどんどん縮小し、そこから読み取れるものは氷塊の状況でしかない。ニールセン時代のPTD-2015 は2014年の売上げを2億2,300万冊ていたが、2016年が1億8,000万、2017年が1億6,200万となった。この数字はほとんど産業統計として用をなさないレベルと言うしかない。Data Guyの推定データはもちろん、出版社の業績に見る数字でも、E-Bookの「衰退」に対応するデータはないからである。AAP1,000社以上をカバーするBISGのBookStatsや、オンライン・アナリティクスによるData Guyのデータなどを総合してみる以外にないだろう。
Amazon.com以来20年、Kindle以後10年で米国の出版市場は一変した。オンラインが印刷本の6割あまり、デジタルのすべてを販売してエコシステムの頂点に立ち、E-Bookではインディーズが半分を占めるという状況で、もはや伝統的な「出版統計」は意味をなさない。南の海を浮遊する氷塊の寿命は長くないからだ。◆ (鎌田、04/26/2018)
参考記事
- E-book Sales Fell 10% in 2017, By Jim Milliot, Publishers Weekly, 04/25/2018
- eBook sales plummeted by 10% in 2017, By Michael Kozlowski, Good eReader, 04/25/2018
- Publisher eBook Sales Fell 10% in 2017, By Nate Hoffelder, The Digital Reader, 04/25/2018