アマゾン・ビジネスモデルの秘密

Bezos7アマゾンのジェフ・ベゾスCEOが、2018年のアクセル・シュプリンガー賞を受賞した際のインタビューで、「なぜ本から始めたのか」という質問に答えている。筆者も『Kindleの十大発明』で自分なりに考えてみたので、この問題には関心が深い。それは本の「価値」についての無数の答の中の一つだが、巨大な「時価総額」を実現した答となるからだ。

The First Thingは本以外ではなかった

Axel_Springer_awdゼロから始めて世界最大の企業となった 'Everything Store' のスタート(The First Thing)がなぜ本だったか? この疑問はますます人々の好奇心を掻き立てるものとなっているようだ。ベゾス氏の答はこうだ。

「同じカテゴリーの中で、商品の選択肢が最も多いことで選びました。それを思いついた1994年には、合計で300万点の印刷タイトルが販売されていたのですが、最大級の書店でも15万点しか置いていません。だから(在庫と無関係に)自由に本が選べるオンライン書店なら成功すると考えたのです。かつて印刷された本をすべて、絶版本を含めて、というのが元々のアイデアでした。」

「それは本以外ではなかったのです。不思議なことですが、とても長い時間がかかることは覚悟していました。最初の30日で成功を確信し、次に不相応に多くの本を売ったことに気づいて愕然としました。当時はまだ社員10人ほどでソフトウェア技術者ばかり。私も入って全員で梱包をやりましたが、作業台がなかったので、コンクリートの床に膝をついた姿勢を続け、膝と背中がズキズキ痛みました。夜中の1時過ぎに、私が『こりゃ膝当てを手に入れなきゃいけないな』と言ったら、ポールという技術者が『それより作業台だよ』と言ってくれたのです。『なんていい考えなんだ』と私(笑)。翌日すぐに作業台を買いに行きました。それで作業効率は倍になり、膝と背中も助かったのです。」

彼の答は、以前話したことがあるもので目新しいものではないが、重要なことは「ブック・ファーストjが1994年の時点で考え抜いた結果であること、最もロングテールな市場であることを「潜在性の大きさ」と認識していたことだ。多品種少量を嫌う出版関係者は多いが、彼はそれが素晴らしいことを確信している。それは同じ「お客」でも本のお客=読者は他の商品とは違うからだ。現代の消費社会で、本ほど一つの商品と長く、深く付き合うことは少ない。本でつくった顧客は長く付き合える、アマゾンはその後のビジネスでそのことを実証した。

競争相手を恐れない自信

B&Nさて、アマゾンは1997年に最大の危機を迎える。業界最大手のバーンズ・アンド・ノーブルがオンラインストアの開設を発表したのだ。社員125名で年間売上6,000万ドルあまりの小企業の最初の競合が、3万名、30億ドルの大企業となり、新聞でも「アマゾン終わる」と書かれた。

「社員たちも両親から「大丈夫?」と心配される有様で、全員が不安でいっぱいなので、社員総会を開いたんです。私はこう言いました。『もちろん、皆も私も心配していい。でも競争相手を恐れる必要はない。彼らがわれわれにおカネをくれることは絶対にないからだ。それよりもお客を心配しよう。われわれが強い競争相手のことではなくお客の心配を続ける限り、私は大丈夫だ。これからもいろいろなドラマはあるだろうが、迷った時にはお客の心配をし、もっと満足してもらい、喜んでもらうにはどうしたらよいかだけを考えよう。」

そこには本(読書を通じて得たお客)への呆れるほどの確信がある。それがけっして言葉だけではないことを、筆者は近著『Kindleの十大発明』を書いていて知った。アマゾンのビジネスモデルは、現在もなお本の上で発展している。それはKindle(オンライン/モバイル読書)で拡張され、オーディオブックで音声読書に拡張され、スマートスピーカーで音声ショッピングに結びつけたように、本からコマースに広げる<一点突破・全面展開>は、止まるところを知らない。しかもまだ「競争相手」はいない。 (鎌田、05/15/2018)

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