停滞する活字と拡大する音声出版

audiobook_mobile米国のオーディオブック市場は昨年も30%近い成長を継続し、停滞する出版ビジネスの唯一の成長分野としての地位を確定させているが、大手出版社の1Q業績に占める比重も大きくなってきた。あらゆる数字は活字出版の圧倒的優勢が過去のものとなりつつあることを示しているが、出版社はまだこの構造的変化に対応しきれていない。

高齢化する活字読者、若いオーディオ読者

HarperAudioハーパーコリンズ社は、消費者市場に占めるデジタルの比率が22%で、そのうちA-Bookが25%でデジタルにおける比率を高めている。サイモン&シュスター社は、販売タイトル数が15%増えたこともあって1QのA-Bookが43%増となり、通年でも10%の成長を予想している。同社は活字出版が低調だが、A-Bookがマイナスを補っている。アシェットの1Qは、4.42億ユーロの収入の21%がデジタルだが、A-BookはE-Bookの不振を補っている。ペンギン・ランダムハウスの1Qのフォーマット別内訳はまだ出ていないが、出版タイトルは着実に伸びており、販売体制も強化されている。

米国Audio Publishers Association (APA)の数字では、2016年の発行タイトル数は5万点を超え、売上は21億ドル。普及率は24%、聴取人口は6,700万人、若年層を中心にポッドキャストでの読書体験が普及するにつれて、マーケティングでも影響力が大きくなっている。聴取者の48%は35歳以下であり、「活字世代」の退場とともに、出版市場におけるオーディオの比重はさらに大きくなるだろう。

紙に依存しない出版と読書へ

E-Bookの登場以来の出版界の関心は、もっぱら印刷/デジタル、書店/オンラインであって、非活字系のオーディオ(音声言語コンテンツ)への関心は薄かった。A-Bookは活字市場を侵食しないという認識を得ただけで、出版の将来における音声の位置づけ、活字と音声の連携に目が行っているとも思えない。ただ書店とは無関係なので「危険」ではなく、利益率が高いデジタル商品として力を入れるべきだ、という点で一致しているに過ぎない。Kindleの立上げの時点からオーディオに注目し、最近では版権戦略の焦点としているアマゾンと比べると大きく遅れている。

デバイスや聴取環境の問題もこれから重要になっていくだろう。これまではスマートフォンを中心とすることで考えなくても済んできたが、これからはポッドキャストとスマートスピーカ、そしてE-Bookを含むマルチリーダが重要となる。本当の意味で紙に依存しない出版と取組む時期に来ている。 (鎌田、05/24/2018)

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