出版印刷のデジタル転換に異状

EBM_print北米の出版印刷(書籍・雑誌)第5位の有力企業 エドワーズ・ブラザース・マロイ社 (EBM)が今月、125年の歴史を閉じた。オフセット印刷市場の需要急減と「オンデマンド化」によるデジタル売上の伸び悩みが理由だが、直接的には年金支払いのダメージにリストラ努力が追いつかなかったものと見られる。出版と印刷の伝統的関係が継続するにはビジネスモデルの再構築が必要とみられる。

創業125年、米国の老舗はなぜ倒産したのか

www.bookbusinessmag.com筆者はデジタル印刷を除いて印刷業界に十分な関心を払ってこなかったが、米国では容赦のない変化が起きていたようだ。ロットが命のオフセット印刷には、伝統的な高い生産性を発揮できる機会が減少し、少部数化の圧力がかかって設備縮小が迫られ、他方でデジタル印刷は多様な需要を十分に開拓できない。EBMは中西部ミシガン州アナーバーを中心にした名門印刷会社で、良心的な経営とデジタル部門への投資で知られてきたが、市場の変化は対応能力を超えた。

EBMは、昨年度の売上が、9,500万ドル(前年度比3%減)で売上の95%が出版。首位のウィスコンシン州サセックスのQuad/Graphicsの売上は 1億8,700万ドルなので約半分にあたる。業界はここ2年間、企業によって異なる傾向を示しつつも全体として堅調だっただけに、EBMの倒産に悪い予兆を感じているようだ。Borderland Advisorsのジョン・コンリー氏は、「デジタル印刷は伸びており、書籍印刷も全体として堅調ではあるが、企業によっては落ち込んでいる。EBMには転換への時間がなかったのだろう」と述べ、「いずれにせよ、大手の出版印刷会社は大きく数を減らすことになりそうだ」と結論している。

print_book22こうした判断を裏付けるように、印刷産業展示会のSGIAとNAPCO Mediaがそれぞれのイベントを統合し、来年秋にPRINTING United Expo(ダラス)を開催することを発表している。これはパッケージングや長尺インクジェットからテキスタイルまで、印刷技術やフォーマット毎に分かれていたビジネスを統合しようとする動きに対応するものだが、出版印刷もその中に巻き込まれているようだ。「出版」はすでに印刷市場の中で小さなものなのかもしれない。出版印刷の縮小は、もちろん紙からデジタルへのメディア転換を反映している。そのスピードは当事者の希望より早くなる  (鎌田、06/28/2017)

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