CrimeFest 2018 と読書の「公共空間」

CFest_logo犯罪/推理小説の「母国」とも言える英国西部の港町ブリストルで、5月17日からの4日間、その名もCrimeFest 2018 国際犯罪小説会議 (International Crime Fiction Convention) が開催され、作家からファンまで集めて盛況裡に行われた。読書空間を支えるオーディエンスという存在を考えるよい機会だ。

「お祭り」でないフェスタ

Left-Coast-Crime-Logo「ペンが剣より血塗れな場所」という惹句が不気味に光るこのイベントは、今年で10年目を数えた。米国西海岸の American Left Coast Crime (LCC) との交流から生まれたものだが、会期4日間の宿泊型のホテル・イベントは、これが著者と読者が時間をかけて様々な内容を議論するビジネス・カンファレンスであることを示している。何をそんなに話すテーマがあるのか、なぜ著者と読者が、いや「読者」とは誰かということも気になるところだ。そしてこれはもっぱら作家と読者、作家志望者、エージェントのためのイベントで、出版ブランドの影は薄い。

Child-Deaverフェスタは非営利団体が運営する「ボランティア・イベント」で、特別ゲストを除いて全員が参加費+宿泊費を支払い、パネリストはもちろん、会場スタッフに至るまで無報酬という、米国で多く見かける非営利イベントのフォーマットを採用している。シリコン・バレーを生んだ、米国西海岸文化のスタイルだ。「犯罪小説産業イベント」でありながら、「企業」が見えず、したがって「接待」や「商業的演出」などはない。これはファンのための「公共空間」なのである。

fleming-lecarre最初に今年のハイライトから。トークショウは、ベンジャミン・ブラックが聞き手となり、最近ジョルジュ・シムノン作『メグレ警視』シリーズの映画化に取組んだ息子のジョン・シムノンが父とその作品について語るもの。映画は「Mr. ビーン」ローワン・アトキンソンがメグレを演じてヒットした。『フレミング vs. ルカレ』は、スパイ・フィクションの二大巨匠を、俳優と伝記作家が論じる企画。リー・チャイルドとジェフリー・ディーヴァーと二大ベストセラー作家は、読者と「読書」について語るという楽しいトーク。「ほとんどの時間を暗い部屋で自問自答している生活なので、ファンから直接フィードバックを貰える機会は嬉しい」と述べている。 (鎌田、06/12/2018)

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