声で気をとり戻すBook Expo America

bea-spotlight-270x155ニューヨークで先週末 Book Expo America + BookConが開催された。人気作家やコメディアンがトークショウを繰り広げるなど、ポップ・イベント色が強くなる中、基調講演ではB&Nのオーナー、レン・リッジオ氏が意気軒高な姿を見せるなど、ともかく「健在」を確認するだけでも意義がある。日本ではブックフェアが再開できない苦しい状態が続いている。

オーディエンスを通じた気の共有/共感

BEA_con本は「思想と情感」「アイデアとストーリー」の共有を時代と国境を超えて行うメディアで、出版はそのための社会的活動である。経済行為として循環することで定常性が保証され、出版イベントはそのショーウィンドウだ。ルーティン化されてしまうとただの年中行事だが、一度でも止まってしまうと失ったものが感じられる。それが何かといえば、おそらくは人々がその「何か」を求めて集う空間で共有される気 (エネルギー)だろう。それは「体験」され、実感されるべきもので、ことばでは伝えきれない。言葉のビジネスだからこそ、気の交流であるライブコミュニケーションの機会が希少なのだ。トークショウやお笑いは、気の共有/共感の仕掛けだと思えば理解できる。いまは言葉では不十分な時代なのだ。

riggio「トーク」における最大の話題が、オーディオブックとなったのは当然だろう。業界は二桁成長を共有できるテーマを必要としている。出版社統計では、昨年のE-Bookは11億ドルで4.7%の下落。A-Bookは20%台後半の成長を3年あまり続けており、いくつかの統計方法で規模が推定されているが、商業出版社では年額10億ドル、シェア1割程度には達しているようだ。

成長エンジンはまたもアマゾン製

出版社を狂喜させているのは、「聴くモバイル」には既存のコンテンツ市場との競合がないこと。年齢層が若く。書店と無関係なもの気が楽だ。大出版社にとってもストレスのないメディアなのだ。スマートフォンは10年前からあるのだが、出版社はE-Bookを警戒していたのでデジタルの新市場に気がつかなかったのだ。市場は出版社の本格参入を待っていたかのように現在は新しいステージに入った。前のステージでは、アマゾンがAudibleとiPhoneを前面に立てて市場を構築したが、新しいステージは、ポッドキャストとスマートスピーカーが待っている。

Audible_EchoBookConでは、サイモン&シュスター社のキャロライン・ライディCEOが、市場の構築におけるAudibleの貢献を称賛しつつも、「市場での強い独占は問題も生じる」と懸念を表明した。オーディオブック市場は、大まかに版権、製作、ストア、サービスに分けられるが、少なくとも版権以外でAudible(アマゾン)が独占的なシェアを持つ。ストアでは競合が生まれているが、Audibleは(Kindleに対応する)自主出版サービスのネットワークを構築しており、簡単にはシェアは動かないだろう。出版社が懸念するのは販売の独占状態によって、Audibleが手数料を引上げたりすることだ。

しかしその心配は無用だ。宅配のコストは上がっても、デジタルの配信・管理のコストが上がることはない。それはアマゾンが1本でも多くを売りたいからで、ユーザーと「体験」を共有することがメディアビジネスにおける最大のゴールだからだ。このことは筆者が100回言っても通用しないだろうが、アマゾンが市場を完全に制する前には理解してもらいたいものだ。 (鎌田、06/05/2018)

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