Kindle以後ノート(11):Webと出版

web_toolsアマゾンの「パーソナライゼーション」は(億単位の)ユーザーを基点に置いている。比喩でもなんでもなく、UI/UXのモデル化、アルゴリズム化によって、ニーズを比定するためだ。それによってユーザーのモードに最適化した「メディア」を仮想化して得ることが出来る。アップルのようなメディア(ガジェット)のメッセージ性ではなく、Googleのようなメッセージの自在性とも違う発想だ。

ハイパーテキスト+インターネット=Web

伝統的なメディアは「最小(1)から最大(N)」の発想だが、最も効率から遠い「本」こそ最終的に最大の市場への近道であるという逆の発想がどこで生まれたのかを筆者も考え続けてきた。アマゾンが億単位を相手に、上から目線の「1:N」ではない「1:1」のアプローチを取れるとすれば、それが可能な一般的根拠があるはずで、それはなんだろうということでもある。

「デジタル」と「インターネット」はつねに答となるが、それだけでは足りない。UI/UXも必要だが十分ではない。それは双方向性を成り立たせるものだが、それは誰が考えても(ほんとうのところ)いささかうざいもので、社会的なコミュニケーションでは、規模が大きくなるほど「1:N」が優先されている。企業においても社会においても、人々は「1:1」を小さく(濃く)「1:N」を大きく(薄く)しようとしてきた。アマゾンの顧客第一主義は、「1:1」を仮想化するインタフェースのイノベーションによって機能している。そこまでは誰でも想像できるが、その方法が見つからないから競争できないのだ。

DP-Hypertextむしろ、逆に考えてみるべきではないか。メディア社会の中で軽視されてきた「1:1」をインターネットで復活させたものがあり、それをアマゾンが利用したということだ。それは「本」と関係がある(がイコールではない)。毎年何万、何十万点も発行され、歴史的に何億点も蓄積されている本にアマゾンは注目した。そのことは前著(Book1)で見たとおりだ。しかし、筆者は、本とWebにはつねに「別の」可能性があると考える。アマゾンはそれに気づいている(Googleも気づいたがアプローチが悪かった)。そしてKindleは、まだ紙の本との継承性を確保する第一段階であると考えられる。

冊子本とWebの融合による第2段階?

Webは、伝統的な出版にとって本質的な「脅威」だった。その理由は3つ。第一に、それがもともと「インターネット出版」のために生まれたこと、第二に、それが非商業的環境を背景に生まれ、独自の知的/道徳的主導性と文化を有していたこと、第三に、ハイパーテキストという冊子形態を(包含しつつ)超えるネットワーク構造であったことである。人々はインターネットに、表現の手段を求め、また非商業的な出版物を求めて集まる(ブログや投稿など)。そこで出版と別な市場とビジネスが生まれるのは当然だろう。

Webは、デジタルとは別の「人間の思考」を支援するという発想から生まれた「ハイパーテキスト」を源流とする。それは「ページ(メニューとリンク)」から出来た世界だ。「人の思考のように」というところに注目したい。これが「紙の本」との違いとなる。

これまで人々は、「紙の本のように」考えて本をつくってきた。これは紙の上での表現のためのもので、考えを発展させるうえでは必ずしも自然ではない。Webは、思考(アイディア)を共有する「自然」なライティングを提唱した。「ホームページ」で知られるようになったHTMLライティングは、ビジネスや研究開発を超えて「ブログ」やSNSで一般に広がった。「Web出版」の普及はまだこれからだ。

Web出版は、在来出版との互換性がなく、確たるビジネスモデルが見つからなかった。しかし、UI/UXと、バージョンのインタフェースによる付加価値がWeb出版のビジネスモデルを形成すると考えられる。インターネットの時代に変わらないものは「より良い体験を求めるユーザーのニーズ」だけだ、というベゾスの箴言を筆者は信じている。 (鎌田、06/26/2018)

第4章 顧客志向の書店:パーソナライゼーションとIT -Amazon.comとAmazon Books
Kindle以後10年(1):Web時代の出版とKindleの十大発明』参照

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