Kindle以後ノート (13):オーディエンスづくり

audience2版から生まれる複製物の金銭価値を基準とした旧出版は、21世紀に入って確実に衰退してきた。E-Bookは版に依存しない出版の経済モデルだが、日本などを見ている限り、経済モデルの移行は(漫画を除いて)スムーズではないし、出版活動全体を衰退から救うにはほど遠い。最も避けるべき(しかし高い)可能性は、赤字出版の消滅である。

「版」では十分な読者を得られない

famousエコシステムとして存在してきたものに「選択と集中」などという安直なルールを適用するとどうなるかは、大抵の企業が経験したことだ。事業は「価値」の連鎖で成立っているのだが、出版はその典型ともいえる。一方では「印刷本エコシステム」の縮小があり、他方では「アマゾン・エコシステム」の下でのデジタル・サイクル(オンライン/コンテンツ)の拡大がある。アマゾンが重視しているのは、社会的コミュニケーションの最も広い裾野を形成してきた出版活動を、メディア・インフラが移行していく中で維持・拡大を続けることだ。

出版社/出版者の目的が「純粋な版の経済モデル」を維持するという、非現実的な目標でない限り、アマゾンの推奨価格は(出版者と著者にとって)現実的なもので、売上の最大化に近い。アマゾンは販売に協力してくれる。だから、出版者は読者に刺激を与える出版活動のレベルを維持すべきだろう。しかし、重要なことは、「版の経済」という意識でインターネット時代の情報環境に出版活動がマッチしていることで、その点で現在の出版者はまったくと言っていいほど外れている。出版の相手の目を惹き、心に届くものがなければ、紙でもデジタルでも売れるはずはないのである。

あなたの本は知られていない

who_knowsここで出版の相手を「オーディエンス」と呼ぶことにする。まだ読んでいない相手を「読者」と呼ぶのは適当ではないし、読者にとってコンテンツが(時刻表のように)「消費」するものではない以上、「消費者」も正しくないからだ。

では、オーディエンスはなぜ(そうする理由があるにもかかわらず)関心を示してくれないか。理由は次の2つのどちらかだ。つまり、

  • 知られていない。(テーマ、内容、著者…)
  • なぜ読むべきかが理解できない。(重要性、知るべき価値との関係、他との比較優位…)

これまで、著者や出版社は「雑誌」など書籍に近いジャンルのメディアに掲載実績をつくり、書評を掲載してもらいやすくしていた。しかし、そうした環境はほぼ消失し、インターネット上の「メディア」は最小限の「情報」で広告を得るためのもので、YouTubeほども利用されていない。出版において役に立つものはほとんどない。つまり、出版社は自らインターネット上の環境整備をリードしなければならないのだ。出版社は誰かに頼るべきではなく、頼られる存在にならなければならない。なぜなら、出版社はその分野で何らかの実績があり、あるいは「オーディエンス」から評価される実績ある人物をオーガナイズできるはずだから。 (鎌田、07/12/2018)

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