「文」の価値は復活するか?

ALCS-280x150英国の著作権管理団体ALCS (Authors’Licensing and Collecting Society)は6月27日、5,500人を対象とした調査レポート「英国作家の所得 2018年版」を公表し、著者の収入が2013年以降15%、2005年以降で42%と急速に下落していることを示した。中間値は 1万ポンド(£10,500≒153万3,000円)と最低賃金以下となる。当然、専業作家は40%からさらに下落して13.7%となった(詳細は比較対象を厳密に照合して今秋発表)。

専業ライターの「崩壊」

SoAuthors10年あまりで収入が半分に、ということが一つの職業の崩壊を意味するかどうかは、支給対象の「業務事例」を絞った、かなり厳密な比較を必要とすると思われるが、所得の減少が広汎で持続的であること、米国でも(そしておそらくは日本でも)同じ傾向が見られるので、これは事実だろう。デジタル/インターネットによって出版機会が爆発的に増加し、それ以上にライターが増加し、出版者のビジネスモデルに安定が失われたことが背景にある。

市場が相対的に限定されていたデジタル以前の活字印刷時代、「原稿料」は出版物の制作費用、印刷コストに比例していた。日本では「1文字2.5円」といった文字入力コストの目安があり、原稿料も「400字5,000円」といった「相場」があった。雑誌から広告印刷物、レポートまでさまざまな印刷物があり、単行本のような印税仕事の間で、ライターは仕事を選ぶことができた。つまり、日本では「印刷」が文字の価値を裏づけていたのだ。制作費は出版者のリスクの大きさを意味し、ライターは印刷物の価値を高め、リスクを最小化することが期待された。

デジタル化とライターの窮乏化

author-earningsデジタルは、印刷版を不要にしたが、同時に版と印刷物(および原稿)の価値を劇的に下げた(リスク額で表現される)。印刷によって保護されていたライターは、原稿に対するリスペクトも同時に失ったのだ。これは(しばしば、よろず原稿料で会社を回してきた)筆者の実感でもある。ワープロは、最初は仕事を助けたが、のちには原稿の価値も洗い流してしまった。

デジタルの果実は、現在はメディアと一部のクリエイターに集中している。英国の「クリエイティブ産業」は年間920億ドルを売上げていると推定されており、大手出版社の売上も伸びているが、生産手段を持たない著者の「窮乏化」は、どう理解したらよいのだろうか。この議論は英国ではさらに沸騰していくと思われる。 (鎌田、07/05/2017)

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