ドイツE-Book市場は二桁成長を回復

e_reading大陸欧州のE-Book市場は米国(の出版社市場)と同じく低迷していると考えられていたが、今年前半のドイツ市場は、数量で16.4%、金額で11.3%とともに二桁成長を達成していたことがドイツ書籍流通産業連盟とGFKの調査で明らかになった。平均価格で4%という価格の低下が需要を牽引し、読書人口も拡大するという健全な姿を見せている。

二桁成長に転じた市場

German-Flagドイツの市場調査は、ドイツの書籍流通産業連盟 (Boersenverein)とGfKが共同して提供しており、後者の消費者調査(サンプル数25000人)による予測が含まれていることが特徴だ。18年前期の数字は、数量ベースで前年同期比16.4%、1,670万部。これは平均で4.3%の価格低下によるもので、逆に金額では11.3%、1億60万ユーロと、初めて1億ユーロを達成した。純粋な書籍で年額にして250億円とすれば日本を遥かに凌ぐ規模である。

Boersenvereinの調査方法は不明だが、出版社中心、書店中心、両者併用のいずれにせよ、アマゾンKindleの全容を捉えていないし、自主出版市場も見えていない。

GfKの消費者調査でも、今年前半にE-Bookを購入した消費者は、6.1%増加して270万人となった。一人当たりの平均購入冊数は6.2冊と、これも1割近く増えている。残念ながら、ストア別のシェアは明らかではなく、Tolinoも数字の発表を止めた。一般的な推定ではアマゾンが6割以上を占め、残りはアップルとTolino(Kobo)とされている。注目していいのは、平均で月1冊というペースである。これはE-Book読書が多読層に浸透していることを示している。無読層が5割と言われる日本ほどではないが、ドイツも不読層が人口の4分の1はおり、多読層も同じくらいだ。270万人は8,200万人の総人口の3.3%足らずに過ぎないが、比較的アクティブな1500万人あまりの市場のなかでは2割に近づいており、無視できないものといえよう。

価格低下で市場が拡大することを改めて証明

tolino_german「書店至上主義」の出版界の安値警戒が続く中で、価格の低下に反応して市場が拡大したことは、出版社が方針を切換え始めたのか、それとも自主出版タイトルの増加のせいか、情報不足で分からない(米国の AuthorEarningsは英語圏しかカバーしていない)。いずれにしても時間がかかるだろう。しかし、オンライン読書を奨励しておかないと、いずれ社会は4分の1の読書層、4分の1の不読層、残りは「必要に応じ字も読む」オンライン・オーディエンスに分裂して読書層が孤立することになるだろう。

伝統的に(お金がかかる)読書は所得・学歴との相関が強く、出版ビジネスは廉価フォーマットの開拓を通じて出版市場を成長させてきた。皮肉なことにデジタルによって価格の硬直性の原因(版による複製)が解消し、読者/消費者に直結するイノベーションの可能性が生まれた時に、出版社は可能性を封じることに腐心している。このままではアマゾンがイノベーションの機会を掴み、出版社は20世紀の文化的遺産として残ることになるだろう。 (鎌田、08/21/2018)

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