メディアを超えたヒットはWattpadで生まれた

KBooth15歳の時(2010)にWattpadで書き始めた初恋小説 'The Kissing Booth'で多くのファンを獲得した英国のベス・リークルスの作品が、ランダムハウス社による出版を経て、今年5月Netflixによる映画版がさらにヒットして話題になった。大学を卒業した彼女は、今年23歳で「恋愛小説家」となっているが、Forbes誌の記事は、Wattpadというソーシャルな創作環境について改めて注目している。

15歳の作家の初恋小説

BethReeklesNetflixは本作(邦題『キスから始まるものがたり』)の成功によって、「ラブコメ」に注力することを決定したと言われている。Wattpad→活字出版→映画という路線は、21世紀の成功パターンの一つと言えそうだが、それは「自分が読みたいものを書いた」フィクションが同世代の共感を呼び、世界的に広がっていったという流れがある。それをつくり出したのはWattpadという環境だ。

E-Book自主出版でミリオンセラー、あるいは億万長者が生まれたのは、アメリカ・ミネソタ州出身のヴァンパイア作家、アマンダ・ホッキングがKDPでヒットを連発した2011年とされる。その後はマクミラン社傘下の大手出版社のセントマーチン・プレスで着実にキャリアを重ねている。KDP以前の彼女は、介護関係の仕事で生活費を稼ぎながら、出版社に原稿を送り続けては返事を待つ日々を送っていたのだが、自力でベストセラー作家の地位を得たのち、出版社から高額の契約金を得て執筆を続ける生活に入った。彼女の場合は最初からプロとしての実力があったのだが、紙の世界では単純にデビューの機会が得られなかったことが重要だ。今日では、新人が紙の本や紙の出版社に期待することはむしろ少ないし、出版社も新人のオンライン実績やフォロワー数に注目する。

大学を卒業して「職業作家」へ

KBooth_book_set15歳のベス・リークルスの場合は、1章づつ投稿を重ねていくWattpadで得た読者の反響を糧として話のコツを会得し、'The Kissing Booth'は1,900万人の読者を得るに至る。ランダムハウスがこの少女と契約したのは2012年で、まだ17歳。もはやWeb上のヒットメーカーは、世界最大の出版社にも逃すことが許されないターゲットとされる時代となっていたということだ。ランダムハウスは、まだ無名だったE.L.ジェームズ『フィフティ・シェイズ』三部作も空前のヒットとした。ジェームズが書き始めたのは、FanFiction.Netで、これもソーシャル投稿サイトだ。『ハリー・ポッター』の著者といい、女性は「語り」の才能を持っている。

ベス・リークルスは、現在23歳。名門エクセター大学(物理学)を卒業して「職業」作家となった。日本なら「アイドル」にされてしまうところだが、さすがに英国は、出版界に限らず、若い才能をイジらないで育てる大人のプライドがある。日本にも才能あるティーンはいるが、眼識・良識ある大人が少ないのだ。 (鎌田、08/28/2018)

Send to Kindle
Pocket

Share
Scroll Up