世界最大の出版社PRHが図書館いじめ

PRH_logo-280x150世界最大の商業出版社ペンギン・ランダムハウス(PRH)は10月1日からE-Book貸出の契約内容を改訂することを発表した。価格は下がるが利用期間は2年で、大人向けが最高55ドル、青少年向けが同45ドル、子供向けが同35ドル。図書館関係者の反撥を予想して、「実際の利用は、発売後6-8ヵ月で急激に減少するので影響はほとんどない」としている。

本の「生産性」とは何か

sprouting-seedsThe Digital Readerが「正気と思えないほど高価で短期」から「途方もなく高価」な価格への変更と形容したように、今回の変更を理解することは難しい。そもそも、E-Bookの貸出は、予算縮小に悩む図書館、デジタル時代の利便を求める利用者のニーズに応えるためのものだった。大出版社と中小出版社とで利害が分かれ、図書館関係者からは「正気」が疑われていたほどだ。PRHの変更は、図書館を市場における積極的な要素と考えず、利用は少ないほどよいとする偏った見方であることを意味している。長期化すると市場にも影響があるだろう。

本には売れることによる販売価値と、読まれ(内容が共有され)ることによる社会的価値とがある。図書館で購入された本は、貸し出されることで販売に影響し市場に還元されるという想像力を持てない出版関係者は、売れたはずの本が売れずに「損した」と考える。読まれたことで「版の価値が減価した」と考える人は、版がデジタル化されて物理的な意味を失って10年以上経ってもなお少なくない。彼らはいまや版権(出版)の著作権(創作)に対する優位を主張して戦っているのだ。これは天に唾する行為だ。

読まれることが本の社会性=生産性である

buy_or_die彼らは、活字時代の「版の制作コスト」、発売後半年の採算性(いわば版の「生産性」)を絶対視する。出版の文化性を謳うわりには、裕福な出版経営者ほど、出版の母体となる社会を軽視する。優秀な編集者ほど図書館を活用しているが、彼らは書店よりは図書館で社会を学んでいるのだ。出版の衰退は経営者が社会を忘れることによる。

share2本の価値は読まれることによって生まれる。読者の心と知恵が豊かになることで次の出版と読者が生まれるからだ。その価値は出版社の懐が豊かになるかどうかとは無関係だ。出版社は読まれる価値のある本をつくり、持続性のあるビジネスを維持することで社会に価値とされる。アマゾンは(版から生まれる複製品の売上/利益を基準とする)伝統的なビジネスモデルから自由な出版を始めて成功した。21世紀はソーシャルな価値の循環が機能する時代だ。有史以来の図書館の社会性を軽視する出版社は、明らかに滅亡の道を歩んでいる。 (鎌田、09/06/2018)

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