出版界に愛想を尽かされたB&N

B&N stores2B&Nの前CEO解雇は、当事者による提訴に発展したが、それ以上に出版界を揺さぶった。何よりも、創業筆頭株主に事業継続意思がないことが暴露されたためだ。巨大書店チェーンという、業態を一社で代表するB&Nには競争がなく、採算も悪化しているとなれば、2011年に経営破綻したBordersの運命を想起させる。

「書店を」知る」とはどういうことか

B&N2当然のことながら、出版社の幹部はB&Nへの「愛想」を尽かしたようで、次のCEOへの期待もほとんど失い、むしろ「早く買い手(もちろんアマゾン以外に)を見つけてほしい」というところまで行ってしまった。もちろん、共通の願望は「書店を知る経営者」である。Publishers Weeklyは、そうしたニューヨークの空気を伝えている。

しかし、「書店を知る」とはどういうことか、あるいはアマゾンとE-Bookのの時代に「書店」とは何か。出版社にとって、600+の店舗を維持することが第一の期待であるとすれば、それは最初から不可能に近い。顧客サービスが低下している時に「存在していることが最大の顧客サービス」という時代はもう戻らない。B&Nは20世紀の最後の20年間に、ほとんどM&Aだけで「成功」を収め、リッジオ氏は現実感覚を失っていたのだと思う。21世紀はじめにウィリアム・リンチをCEOに起用し、デジタルでも成功したかに見えたのは何だったのだろうかと思わずにはいられない。

在来書店の存在価値は20世紀で半ば終わっていた

Borders-bookstore010311歴史的にみると、1960年代のB&N(もちろんリッジオ氏)には、流通テクノロジーで出版市場を変える力があった。次いでトムとルイスのボーダーズ兄弟が、1971年に米国の出版の(もう一つの)中心地ミシガン州アナーバーで開業した。Bordersは、80年代を通じて流通におけるインテリジェンスの要である在庫管理システムで他をリードした。それは顧客サービスと結びつく今日的な意味でのITで、筆者が記憶する限り、米国の大書店のトップがITを理解した最後だったと思う。

riggioB&Nに迫ったBordersは、しかし1992年に大手小売のKマート(のちにシアーズ)の傘下に入ったことで経営の独自性を失い、ほんとうのデジタル革命が始まった世紀末に能力を発揮すべき人材を失っていた。国際化・多角化は「顧客のためのIT」と離れ、効率を悪化させる原因になった。Bordersの倒産(2011)は、冷戦後の米国のようにB&Nの最終的勝利を告げたようで、実はその逆だったのだ。

B&Nが別法人としてオンライン・ストアBarnesandNoble.comを始めたのは1997年5月である。そして2002年、.comを成功に導いたウィリアム・リンチがレン・リッジオを引き継いでCEOに就任する。B&Nといえどもデジタルを理解するリーダーを必要としていることを出版界が理解し、それによって消費者/顧客の期待に応えられるという期待に包まれた。オンラインに失敗したBordersに代わって、B&Nが名実ともに書店のリーダーに返り咲いた。しかし、B&N(つまりリッジオ)は変わっていなかったのだ。(続く) (鎌田、09/04/2018)

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