Kindle以後ノート(18):PoDの「デマンド」

Print5アマゾンの「KDP Print」のサービスが(日本を除く)数ヵ国で開始され、この会社が一貫して目指してきた出版サプライチェーンのイノベーションが完成に近づいてきた。しかし、PoDの歴史は意外と長く、内容は千差万別だが、KDP Printはそれらと大きく異なる。重要なのはPoDにおける「デマンド」と実現されるビジネスモデルだ。

30年前に生まれた「夢の技術」

DocuTechオンデマンドとは、「ユーザー」の要求があった時に、ネットワークを通じて「サービス」を提供することを意味する。オンデマンド印刷(PoD)は、注文を受けてから印刷・製本を行う、デジタル印刷のプロセスを意味する。米国ゼロックス社が1990年に命名した(DocuTech)。プリンタと自動製本機、ドキュメントの印刷データを処理するコンピュータがセットになったものだ。

以来30年、徐々に発展して「出版」のプロセスに入り、そのサービスとして提供されるようになった。本来は、「オフィス」のために生まれたものだが、ゼロックス社は基本的に数百ページのマニュアルなどを数百部、短期間に、低コストで納品することを必要とする、軍や大企業を顧客としていたから、システムはそうした「ユーザー」のために開発、製造、納品された。つまり、価格よりも保守・運用コストが重視された。この「巨大複写機」は「出版」のニーズに適したものとなるのは無理がある。企業も「出版」を行うが、そのニーズはビジネスとしての出版とはズレがあるからだ。

アマゾンの「ストレス・フリー」出版ビジネスモデル

出版社や印刷会社もPoD技術を必要とした。標準的なオフセット印刷の品質と生産性に近く、少部数でも一部当たりコストが低くなるというものだ。それは「オンデマンド」であるよりも、単位部数当たりコストが安くなることを求める。配送の問題があるので「一部単位」では意味が少ないのだ。そして「オンライン書店」も独自のPoDを必要とした。これは印刷が本業ではなく、本を一部でも多く売りたいので、印刷本のペーパーバック仕様に極力近い商品を、利益ゼロで提供することに意味がある。それによって本の販売(配送)で生まれる著者と消費者と書店の利益は最大化される。とくに著者/出版社は、データを用意しさえすれば、消費者からの注文に応じて、固定費なしで納品まで出来るだろう。

KDPアマゾンは、出版もシステム・サービスとして考えている。そこでは「消費者」のストレスを低減することが事業の拡大につながる。伝統的な出版におけるストレスは、消費者にとっては、入手性(情報、在庫・選択肢、配送、価格)であり、出版者にとっては市場対応コスト(在庫、納品)である。アマゾンは著者と読者のストレスを解消して書籍の可能性をを最大化することを目ざしている。そこでは在来の印刷サービスの利益機会は限られるだろう。それは著者/消費者の利益と相反するからだ。 (鎌田、09/13/2018)

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