Digital Book World、南へ行く

DBW2018F+W Mediaが放棄したDigital Book World (DBW)は、昨年新興の Score Publishingに売却されていたが、10月3日からカントリー音楽の中心都市で開催された。基調講演に立ったのは、Author Earningsで知られる出版データのアナリスト、「データ・ガイ」。BookStatという出版データサービスを立上げた人物だ。

在来出版の停滞は「植民地支配」のせい?

DBWが62b1f6_594a0c96ba2d4b4a97843ef33d8bd6bc~mv2_d_1652_2560_s_2出版の中心都市ニューヨークを後にして、カントリー音楽の「聖地」ナッシュビルをホームグラウンドとした経緯や、それにBISGも参画するようになった経緯は、これから伝わってくるだろう。出版界のデジタル・シンクタンクとも言えるBISGには、2016年から専務理事にブライアン・オリアリー (Magellan Media Partners)が就任していた。オリアリー氏は『マニフェスト・本の未来』(2013, ボイジャー)の共著者としてご記憶の方もいるだろう。米国の出版界で最高のデジタル・コンサルタントとして知られている。

オリアリー氏がこのイベントをリードするということは、筆者の予想が正しければ、米国の出版界が、「ヨーロッパの旧植民地帝国」が支配する「東部植民地」から脱して、技術と市場において成長をリードする本来の地位を奪回すべく荒野を目ざすという、待望した動きである。

周知のように、ビッグ・ファイブと呼ばれる世界の大出版社の大半は、ベルテルスマン、ホルツブリンク、アシェット、ニューズ社という非米国資本の支配下にあり、米国の大出版社はCBS傘下の Simon & Shusterしかない。ヨーロッパの「旧体制」が米国市場を支配し、書店のB&Nが消滅の危機にある。他方で、デジタルによる進化を代表するアマゾンは、唯一米国でイノベーションを代表して「旧体制」を制圧することに成功している。米国の出版人の間には、欧州のボスよりも米国のヒーローに共感する空気が広がっていると思われる。

デジタルの失われた10年は終わった

Brian2在来出版がアマゾンとの「価格戦争」に時間を空費していた期間は、「デジタルの失われた10年」だった。オリアリーたちが構想した「出版のデジタル革命」は、在来出版の経営陣によって潰され、デジタルでの起業を志した人材は、Kobo(カナダ)やWattpad(同)に吸収された。もちろんアマゾンが最大の受益者であったことは言うまでもない。本来、Kindleの10年は、米国出版の新生の10年となるはずだったが、言うならばアマゾンに「功を独り占めに」されたという感慨を抱いた人々は少なくないだろう。

米国の出版が再起するのに、独自の非都会的文学を生んだ南部ほど相応しい土地はない。ナッシュビルは経済的にも南部の資金を誘引しており、「米国の出版をデジタルで偉大に」することに関心を持つ資産家も少なくない。テキサスのヒューストンで開催されるSXSW (South by South West) は新しいメディア・ビジネスを育てようとしている。本誌も「南部」に注目している。 (鎌田、10/23/2018)

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