データ・ガイ=BookStatの始動 (1):視界不良

Data-Guy-headshot-2-300x225唐突な観もあるDBW 2018のハイライトは、間違いなく2015年以来、出版界に衝撃を与えてきたデータ・ガイの基調講演「BookStat:出版産業のためのオンライン販売データの再起動」だった。ここで彼は、Kindle以後の10年でなぜ米国の出版ビジネスが確かな視界を喪ったのか、いかにして取り戻せたか、そこで見えてきた驚くべき現実とは何かを完璧に、説得力ある形で描き出した(写真は2015年のDBW初登場時)。

出版のデータ・プラットフォームの再構築

bookstat-2d-logo-280x150データ・ガイは、まずこれまで出版界が信じてきた、ニールセンBookScanとそれを継承するPubTrack Digitalによる2004-2015年の年次データをグラフにして提示した。12年間のうち、2009年までは印刷本のみの数字、2010-2013年はE-Bookが急成長し印刷本と並ぶのが時間の問題と言われた4年間、そして2014年以降は、E-Bookが縮小に転じ「師の影を踏む」ことなく将来も見えない状態に陥っていることはよく知られている。

Slide04E-Bookがグラフに登場して以降の2010-2017だけを見れば、2013年を折り返し点にして、2010-2013と2013-2017の対象が鮮やかだ。筆者は大出版社のE-Bookの価格引上げとデータ採録方法の不備が理由と考え、読者の「デジタル疲れ」といったメディアの見方を戯言としたのだが、いかんせん、市場の転換期に起こりがちな「チャネル」と市場のミスマッチが拡大したうえに、在来メディアが一致して、固定カメラで得られる現実以外は見ないという姿勢を維持したので、業界のリーダーたちは喜んで「不都合な真実」を放棄した。

Slide04データ・ガイは、本より早くオンラインに移行したビデオゲーム産業のデータ分析の専門家として、伝統的な方法(小売店からのデータ収集)では把握できない移行期の市場を扱う方法を研究して確立した経験を持っていた。自ら作家としての道を模索していた彼は、SF作家としてE-Bookの自主出版でミリオンセラーとなったヒュー・ハウィの協力を得て Author Earningsというプロジェクトを立上げ、2014年から、アナリティクス手法を使ったオンラインストアの売上のカウントを続け、最終的に昨年、全ストアの販売実績(部数、金額)を全タイトルについて毎日記録するという快挙を達成した。そして2018年、印刷本を含めたオンライン上での書籍販売(英語圏のみ)をレポートとともに販売する BookStatサービスを起動した。

2013年のE-Book市場の3分の1が4年間で消失(!?)

sandstormDigital Book World はデータ・ガイが初めて公開イベントでのデビューを飾ったイベントで、今回の登場は、Kindle登場以来の10年に何が起きたのかを、一貫したデータで説明する機会となった。何が起きたか。2013年にピークを記録してから2017年までの4年間に33%、じつに市場の3分の1が失われた。これは尋常なことではない。データ・ガイは、しかし「ビデオゲーム業界」を経験したことがあれば、これはなじみのある数字だと思うだろう、と語る。

Slide06同業界の米国市場での売上 (2010-2015)は、6年間ほぼ横ばい状態(150-170億ドル)を続けたが、内訳では2010年に71%を占めていたパッケージ系が半数を割って44%となった(はずであった)。しかし、ゲームコンテンツ業界団体のNPDでは、かなり長期間にわたってデジタルの数次の大部分が捕捉されない状態が続いていることを知っており、2017年に6年間遡って集計をやり直した結果。2016年の市場が、実際には245億ドルに達しており、2010年時点でも175.1億ドルであったことを発表した。つまり、デジタルは半数を超えたどころか、4分の3を占めていたのである。全体として下降を続けていたと思われていた業界は、着実に成長を続け、下降を続けていたのはパッケージ系だけだったということだ。

Slide07話は、書籍のほうに戻る。彼がビデオゲームの話をしたのは、彼の推計では、ビデオゲームと同じく、デジタルの数字は業界の公式統計では十分に捕捉されず、その割合は年々拡大していなかったからだ。在来のデータ集計がデジタル市場に対応しにくい理由は、オンラインストアからPOSデータが得られないこと、インディーズ出版者の99%は数字を提供しないこと、消費者調査では大雑把な傾向しか掴めないこと…などだ。出版者が必要とする、完全で、デジタル市場全体をカバーする1点毎の販売データこと、オンライン・マーケティングの時代には、半世紀前のPOSデータは、デジタル市場で他のメディアともたたかう出版ビジネスの役には立たないだろう。在来システムは、E-Bookの市場規模の一部を捉えたにすぎず、増加を減少と取り違えるという重大な過失を犯していた、とデータ・ガイは指摘する。

Slide082017年に過去の数字を書き直したビデオゲーム産業は、間違いが2009年から始まっていたことを知った。いまこの業界はインターネット時代のソリューションを手にして、昨日の販売データをもとに、全ジャンル、全タイトル、全出版社の販売数字(点数、金額)を知り傾向を知ることが出来る。出版者は市場を知り、発行時期、価格、メタデータなどを選択することができる。データ・ガイの BookStatはそれを目ざしている。 (鎌田、10/25/2018)。

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