米国出版社の「鏡の国の戦争」は続く

AAP.Logo_.Color280x150米国出版社協会 (AAP)は10月29日、今年の3四半期の出版統計を発表した。売上は前年同期比で4.4%増の2億2,830万ドル。成長はもっぱら成年向け (+4.4%)だが、青少年向け (+3.5%)、宗教 (+7.6%)。教育・学術出版、実務書、教材などは5~10%減少した。フォーマット別では、E-Book (-3.9%)の減少とA-Book (+37.4%)の急伸が目立っている。

「会員出版社の統計」はE-Book市場の30%

こうした傾向は予想されていたことだが、新刊ハードカバー (+6.2%) と量販/ペーパーバック本、とくにノン・フィクションの急増と小説の減少が打消し合うといった、異例の現象の結果である。これはすでにお伝えした通り、中間選挙に煽られた政治ノン・フィクション(トランプ・スキャンダルもの)の増加によるもの。

Jan. – Sept. 2018

Jan. – Sept. 2017

Percent Change

Adult Fiction/Non-Fiction

$3,561.1

$3,411.9

+4.4%

Children’s/YA

$1,420.7

$1,372.0

+3.5%

Religious Presses

$430.1

$399.7

+7.6%

Total

$5,411.9

$5,183.6

+4.4%

Good eBook Reader (10/30) のマイケル・コズロウスキ氏は、こう述べている。「皆さんは、なぜE-Bookの売上は落ち続けるのだろうと自問するだろう。販売の数字はすべてAAPの会員出版社からのもので、インディーズ出版は含まれていない(というのが答だ)」。BookStatのポール・アバッシCEOは、DBW2018で、E-Book市場におけるインディーズおよびアマゾン出版のシェアを70%と見積もっている。AAP (PubTrack) は30%しかカバーしていないのだ。

業界はまだしばらく「公式数字」を尊重するだろうが、「E-Bookの不振」は、紙に依存する在来出版社の不振、あるいはE-Bookへの価格政策の結果だということは、すでに知られている。いわば、E-Bookへのサボタージュに等しい。

Jan. to Sept.: Total Trade Revenue by Format (in millions)

Jan. – Sept. 2018

Jan. – Sept. 2017

Percent Change

Hardback

$1,928.9

$1,815.7

+6.2%

Paperback & Mass Market

$1,976.0

$1,934.2

+2.2%

eBooks

$770.9

$802.1

-3.9%

Downloaded Audio

$336.6

$244.9

+37.4%

Physical Audio

$30.9

$41.6

-25.9%

Board Books

$98.7

$97.5

+1.3%

Other

$270.0

$247.6

+9.0%

E-Bookとの奇妙な戦い

この政策は、最初は書店チャネルの維持とアマゾン依存の抑制のためにとられた。しかし、アマゾンの予想外の対応(印刷本の値引き)もあって、この政策は最初から誤算であり、著者の収入減と消費者の失望がボディブローのように効いている。これほどの「敗着」が修正もされないのは、業界が足並みをそろえた結果、という以外には考えにくい。オーディオブック市場での成功で面目を保っているが、これもほとんどアマゾンに依存している。

A-Book市場は、すでにAAPの数字ではE-Bookの半分近くに達した。成長率からすれば、2年あまりでE-Bookに並ぶ。これを「音声言語市場の優位」と考える著者たちはいないだろう。著者の独立傾向が強まれば、大手でも売上の減少に苦しむことになるだろう。2014-15年から続いた政策の失敗は限界に近づいていると考えるべきだろう。 (鎌田、11/06/2018)

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