「オーディオ」が起動する出版の世界再編

sandstorm米国の大手出版社の四半期決算が発表され、オーディオブックの成長の勢いは止まるところを知らない。すでに出版社の成長の原動力となっているが、紙あるいは活字と比較されるレベルに届くのも遠くはないだろう。欧州的秩序のもとにあった出版産業の再編がここを起点として始まる可能性は高い。

出版界は「紙のデフレ」に耐えられない

deflation2ハーパー・コリンズ (HC)の直近の四半期 (Q1-18) のA-Book販売は、55%を記録した。低落が続くE-Bookの減少分を補う形で、コンテンツ事業は12%増、売上のデジタル比率は22%となった。ニューズ社のロバート・トムソンCEOは、さらなるA-Bookの成長に期待しつつ、従来は容易でなかった中国でのIP政策の変化で、この市場の本格的始動が期待できると述べている。

アシェット社 (HBG)はQ3-18で5.1%増と冴えない数字だったが、これは買収したニューヨークのパーシアス (Perseus Group)のカタログとA-Bookに助けられたもの。「既存事業」はかなり落ち込んでおり、米国事業は本社を含むリストラを発表している。なおHBGも南部の拠点をテネシー州ナッシュビルに集約するとのこと。アマゾンもこの南部都市の若い人材を重視しており、Digital Book Worldの開催と合わせて、注目される。

5beb1789dbed2.imageサイモン&シュスター (S&S)のQ3も5%増で、これはトランプものの空前のヒットに助けられたものだが、フィクションが不振。A-Bookは27%増で巡航速度を維持し、経営陣の期待はさらに高まっている。ランダムハウスの内訳はまだ発表されていないが、ベストセラー実績からして、比較的好調と想像される。

ニューヨーク本社の縮小が始まる

先月のフランクフルト・ブックフェアで話題になったように、大手出版社は売上をアマゾン、「成長」をA-Book(これもアマゾン)に依存して数字をつくっているが、出版ビジネスにおけるシェアを落としており、2014年以後5年あまりの政策が事実上「無策」にほかならなかったことを示している。

言うまでもなく、出版ビジネスはデジタル・パラダイムへの転換期を歩んでおり、書店にも図書館にも逃げ込めるところはない。米国でさえ、「ニューヨーク」が出版市場を決めた時代は終わろうとしており、オーディオを台風の目として、コンテンツビジネスの再編が始まるだろう。これは、デジタル出版時代の新しいページと言える。 (鎌田、11/16/2018)

Send to Kindle
Pocket

Share

Speak Your Mind

*

Scroll Up