カナダで著者収入が「危機的水準」に?

TWUC 日本では「作家の収入」が話題になることはほとんどない。カイシャである出版社の収入は問題になっても、「業界」を持たず、「巨額」にならない個人の収入(あるいは印税総額)などはどうでもいい、というのが慣習なのだろう。しかし、出版の伝統がある国ではそう考えられていない。著者は出版を支える重要な存在で、文化行政の関心事でもある。

「年間1万ドルを割る」その内実

TWUC_repoortカナダの作家団体 (The Writers' Union of Canada, TWUC)が、会員の収入に関する年次調査を発表し、「減少する収入:創作文化の危機」という表現で要約した。年間の著作収入9,380ドルは、2015年比で27%、1998年比で78%減(物価換算)となっており、カナダの書籍産業が20億ドル(人口比で日本と同水準か)なので、TWUCが危機感を表明するのは無理もない。会長は、「多くの要因が関連していると思われるが、最近数年間では教育書籍問題が影響を与えている」と述べている。たしかに、職業としての執筆活動が不可能なレベルといえる。しかし、創作活動が衰えている兆候はなく、2015年時点より活発に働いている。

この結果は、対象/回答者の属性と関係がありそうだ。1,499人の回答者は平均学歴が高く(53%が修士・博士)、62%が60歳以上で、50歳代が20%あまり、と中高年が多数を占める。60歳以上が31%しかいない国で、このグループは代表性に乏しく、カナダの出版に関する調査として発表するには問題が多い、とThe Digital Readerのネイト・ホフェルダー氏は指摘している (11/22)。サンプルに問題がある、ということだ。調査は大学など高等教育機関での無償化が反映しているとみている。米英と比べても、教材の無償複製で群を抜いている。

新しい調査フレームが不可欠

この調査は欧米(日本にも)に共通する「著者の収入減」という傾向を伝えるものではあるが、この問題を考えるには、さらに大きなフレームを設定する必要があると思われる。つまり、従来の出版産業(出版社)のほかに、インディーズ出版を含めた「広義の出版ビジネス」を考える必要があり、非出版/創作収入なども含める必要があるということだ。著者と出版の関係(版権料と配分)も重要だ。

現在は出版とメディアの転換期にあり、「著者」と「出版」の再定義が必要だ。伝統的な作家コミュニティに所属している人々は中高年にあり、今後十年で世代交代が進まなければ消滅する可能性もあるからだ。 (鎌田、11/28/2018)

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