「退屈な話」は終り、出版は新しいラウンドへ

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Bookstatが新しい市場データ・プラットフォームとしての土台を固めつつある中で、米国出版社協会AAPの統計データが異変を示している。読書シーズンの秋に「小説が売れない」のだ。いくら「小説より奇」なノン・フィクション(トランプ本!)が売れすぎたにせよ、これは世紀の椿事で理由がなくてはすまない。

旧メディアの倦怠:「デジタル疲れ」の次は「小説疲れ」

米国出版社協会(AAP)の数字は、本誌も2010年の創刊以来フォローしているが、最近は取上げることが少なくなった。デジタルも紙も動きが(不自然に)少なくなり、それらの代表する市場が限定されてきたためである。New York Times (11/16, Tina Jordan)やPublishers Weeklyは、「小説疲れ」とか「共感倦怠症」といった表現で説明しようと努力している。しかし、The Degital Reader (11/18)は、この「…疲れ (fatigue)」というのは、「デジタル疲れ」キャンペーンでで露呈したような、紙の衰退を隠す「フェイク」あるいは「盛る(サカる)」記事に等しいと批判している。少なくとも、事実誤認とは言えそうだし、Bookstatが毎日の速報データを提供し始めたことを考えれば「職務怠慢」としか言いようがない。

ビデオゲーム業界を代表する米国ESA (Entertainment Software Association)は、昨年、計測方法の誤りによって過去5年間の数字を訂正する必要が生じた、という異例の「重大事実」を発表した。単純に言えば「オンライン計測」による数字が正しいものと認め、その「乖離率」を明らかにしたということだ。

16年レポートと17年レポートの乖離率を見てみると、2010年時点ではわずかであったが、翌年には5%と無視できないものとなり、12年には24%、15年には40%を超えた。つまり、実際の市場の4割以上が見落とされていたと認めたことになる。そしてESAの17年発表は、旧版の16.5億ドルから、23.2億ドルに上方修正された。ビデオゲーム業界は初めて真実に近い数字を得た。

出版ビジネスが正当な市場評価を得る時

imac_with_bookstatビデオゲームはそう古くないが、それでも「パッケージ入り」で販売されていた時代があり、オンラインが主流になる以前は、ESAの得意先であるストアからの情報が唯一のものだった。出版における書店のようなものだ。ESAがオンライン市場の情報公開に消極的だった事情は分かりやすい。ストアの先行きを教えるようなものだからだ。2017年に方針を転換したのは、隠すには限度があることを知っていたからということになる。

ESAやメーカーによる新計測方法の開発に関わっていたのが、「データ・ガイ」として本誌でもおなじみのポール・アバッシ氏である。同じ乖離減少が書籍出版でも起きていることに注目した同氏は、4年あまりの研究開発と長い試行期間を費やした末に、出版市場のためのWeb市場計測サービスBookstatを立上げた。

これは、書店店頭販売を除く、すべてのオンライン・チャネルをカバーするサービスで、(1)オンライン販売の印刷本、(2) E-Book、(3) オーディオブックをカバーしている。これらは、現在の米国書籍市場で、実書店と在来出版社を対象とした既成の調査ではカバーできない領域でありながら、放置されてきたものだ。年次比較で、衰退市場、成長市場、売れるもの売れないものとその理由などを知ることが出来る。つまり、E-Bookは売れなくなっていないし、小説も売れている。それがいつ、どこでなのかを人々は知ることになる。もう、AAPが訂正するのを待つ必要はない。 (鎌田、11/20/2018) (続く)

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